社説

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 人種差別をめぐり、米国社会が緊迫している。

 黒人男性が白人警官に暴行されて死亡した事件への抗議活動は全米に広がり、一部が暴徒化した。公民権運動を率いたキング牧師が1968年に暗殺された時に匹敵する規模といわれる。

 トランプ大統領は平静を呼びかけるどころか、軍の投入を警告するなど挑発を続ける。首都ワシントンでは、警官隊が平和的なデモ隊を催涙弾で追い払った。

 これが民主主義国家なのかと目を疑う光景だ。国民に対して武力行使に出るようなことは、絶対にあってはならない。

 一方で、抗議活動に乗じた略奪や暴力も散見される。決して容認できない。過激派団体が扇動しているとの指摘もあり、デモ参加者からも批判が高まっている。法にのっとり、治安を回復するべきだ。

 事態を悪化させた主因は「トランプ流」の政治姿勢にある。

 大統領就任以来、攻撃的な言動で白人至上主義を助長し、支持固めに利用してきた。その弊害を米国民は直視する必要がある。

 多くのデモ参加者が「黒人の命は大切だ」とのスローガンを叫んでいる。人種差別を禁じる公民権法が成立して56年になる。だが、白人警官による黒人へのすさまじい暴力は何度も繰り返されてきた。

 見過ごせないのは、新型コロナウイルス禍が格差をより深刻化させている点である。

 米国の感染死は10万人を超え、世界で最も多い。黒人の死亡率は白人の2倍強に上る。密集した住環境、在宅勤務しにくい職種、高額な医療費などが原因とされる。

 黒人の失業率も白人より高い。抗議活動のきっかけとなった暴行事件の犠牲者も、レストランを解雇されたばかりだった。

 ただ、新型コロナに直撃されたのは黒人ばかりではない。

 今回のデモにはヒスパニック(中南米系)やアジア系、白人も多く見られる。年代も幅広い。参加した20代の白人男性は「街に失業者があふれ、閉塞(へいそく)感が漂っている」と話している。

 職を失う人が急増する中、デモは人種問題だけでなく、経済格差についても鋭く問いかけている。欧州でも抗議活動が広がっているのは、共通の危機感があるからだろう。

 感染症は弱い立場の者をさらに追い詰め、社会の矛盾を一層あらわにする。求められるのは、分断や対立ではなく連帯であるはずだ。

 分断と差別の解消に向け、米国の政府、議会は問題に向き合い、具体的な議論を始めるべきだ。

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