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 北朝鮮による拉致被害者救出運動の先頭に立ってきた横田滋さんが亡くなった。

 長女めぐみさん=失踪当時(13)=を取り戻す闘いは、87年の生涯の42年余りに及んだ。「めぐみは生きている」との確信が原動力だった。しかし、再会を喜び合うことはついにかなわなかった。

 長年にわたる苦悩と無念は察するに余りある。

 滋さんと支え合ってきた妻の早紀江さん(84)は「今は気持ちの整理がつかない」とコメントした。日朝間の政府交渉が行き詰まっているだけに、なおさら胸がふさがる。

 拉致は犯罪行為である。金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長は、2014年のストックホルム合意で再調査を約束しながら一方的に中止した。全てを明らかにし、全員を早期に帰国させるべきだ。

 被害者家族の高齢化が進む。今年2月には、神戸市出身の有本恵子さん=失踪当時(23)=の母、嘉代子さんが94歳で死去した。被害者の親で健在なのは、嘉代子さんの夫明弘さん(91)と、滋さんの妻早紀江さんの2人だけになった。

 安倍晋三首相は拉致問題の全面解決を政権の最重要課題に掲げるが、取り組みは鈍い。被害者家族会から「何も手を打たないで来た結果」との声が上がるのは当然である。

 政府は切迫感を持って、解決へ向けてあらゆる手を尽くさねばならない。もう一刻の猶予も許されない。

 昨年5月、安倍首相は北朝鮮に対して圧力一辺倒だった路線を転換した。米朝首脳会談を受け、「条件を付けずに金委員長と向き合う」とトップ会談に意欲を示していた。

 ところが進展はない。それどころか、北朝鮮は今年3月に弾道ミサイルを発射するなど強硬姿勢を崩していない。国際社会と連携して対話の糸口を探るなど対応の見直しが必要だ。

 滋さんは体調不良のため10年務めた家族会代表を07年に退いてからも、講演会で問題解決を訴えていた。

 晩年、会話が不自由になってから「めぐみちゃんと早く、会いたいです」と絞り出すように語る滋さんの映像がある。政府の本気度が問われている。

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