コロナ禍にあえぐ中小事業者に最大200万円を支給する政府の持続化給付金事業で、不透明な資金の流れが浮上した。769億円で経済産業省から事業を受託した一般社団法人が、広告代理店の電通に749億円で再委託していたのだ。
この法人は職員21人で常勤の理事がおらず、法で定める決算公告を行っていないなど、運営実体には不明な点がある。
公費による巨額事業を委託する適格性をどう判断したのか。ほぼ全額を請け負う電通がなぜ直接受託しなかったのか。政府は国民の疑念に答える必要がある。
事業を受託した「サービスデザイン推進協議会」は2016年に設立された。理事には電通や人材派遣のパソナの関係者が名を連ね、設立にも両社が関わったとされる。
これまで経産省の事業を14件、総額1576億円受託しており、うち9件を電通系企業やパソナなどに再委託している。
梶山弘志経産相は、電通が過去に事業を担った際に問い合わせが集中したため「直接受託しないと聞いている」と述べた。電通が事業の受け皿として協議会をつくり、経産省も認識していたのなら委託先選定が公平に行われたかにも疑問が生じる。
そもそも、委託者が第三者に事業の大半を委ねる「一括再委託」は多くの省庁や自治体が原則禁止としている。委託者が介在してコストがかさむ、監視が行き届かない-などの懸念があるからだ。
同協議会は委託費の97%を再委託しており、ルールに反する。経産省は「きちんとヒアリングして採択に至った」とするが、入札の結果も含めて、経緯を明らかにするべきだ。
民間に委託したのは、より迅速に給付金を支給する目的だったという。しかし実際は、コールセンターがつながらず振り込みまで時間を要するなど、多くの申請者が不満を募らせている。事業が適切に行われているかのチェックも欠かせない。
コロナ対策の本年度補正予算は、8日に国会に提出される2次補正案も含め、約56兆円の巨額となる。
観光振興の「Go To キャンペーン」も3千億円の事務委託費が高額と批判され、政府は委託先公募を中止した。所管省庁ごとに分割するなど事業構造を組み直す。
2次補正案には過去に例を見ない10兆円もの予備費も計上されている。うち5兆円の使途を政府に確定させることで与野党が合意したが、国会軽視の指摘は免れない。
今国会の会期末は17日に迫っている。立法府は巨額予算の細部まで目を光らせ、問題点があれば政府に修正を強く迫らねばならない。
