社説

  • 印刷

 放射性物質トリチウムを含んだ処理水が東京電力福島第1原発周辺で増え続ける問題について、政府が自治体や業界団体から処分方針の意見聴取を進めている。

 地元福島や東京で計3回の会合を開き、書面やインターネット上でも国民の意見を募っている。

 政府の小委員会は「現実的な選択肢」として海や大気への放出案を示した。会合では漁業関係者らが反対し、風評被害を懸念する声も相次いだ。原発事故の被災地が、反発や不安を抱くのは当然だろう。

 方針は夏ごろにも決定されるとの見方があるが、松本洋平経済産業副大臣は「スケジュールありきではなく、丁寧に意見を聞いていく」と述べている。ぜひ慎重な議論を続けてもらいたい。

 処理水は第1原発敷地内の約千基のタンクで保管し、その量は120万トンに達している。原子炉内に残る核燃料の冷却水や流入した地下水を浄化処理した水だが、トリチウムは除去できずに残る。

 東電は小委員会の提言後、処理水を海水で500~600倍に薄めて海に放出する案を示した。トリチウムは国の基準の40分の1未満になるという。

 しかしそれで消費者が「安心」を得るかどうかは見通せない。

 消費者庁が今年行った意識調査によれば、基準値内であれば放射性物質のリスクを受け入れるとした消費者は53%にとどまった。2013年の調査開始から45~60%を行き来している。

 放射性物質がわずかでも処理水に残る以上、実際に海洋放出されればこの数字が悪化し、福島県産の魚介類が忌避されてしまう恐れは十分にある。

 原発事故後、地元漁業者は試験操業を重ねてきた。今年2月にようやく出荷制限の対象となる魚種がなくなり、本格操業の復活に期待が高まっている。津波で被災した同県浪江町の請戸(うけど)漁港では4月に競りが再開した。

 処理水の問題が、産業と生活の再建を妨げるようなことがあってはならない。

 浪江町議会は海洋放出への反対決議を全会一致で採択した。「地域住民の感情を無視し、被災者にさらなる苦痛を強いる」としてタンクでの保管継続を訴える。国内外の計約320の市民団体も、同様の保管を国に求める共同声明を発表した。

 被災地からの声は最大限に尊重されるべきだ。

 東電は2年後にタンクの総容量が満杯になると予測するが、放出以外に工夫の余地はないのか、幅広く検討したい。

社説の最新
もっと見る

天気(8月14日)

  • 35℃
  • ---℃
  • 20%

  • 36℃
  • ---℃
  • 20%

  • 36℃
  • ---℃
  • 20%

  • 38℃
  • ---℃
  • 20%

お知らせ