社説

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 国会の会期末ぎりぎりになって、重大な政策の変更が表明された。

 河野太郎防衛相が、秋田県と山口県で進めてきた地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備計画を停止すると述べた。政府の姿勢を百八十度転換するに等しい。

 安倍晋三首相には先週報告したが、両県知事に伝えたのは表明の直前だった。先立つ説明は一切なく、唐突な対応が波紋を広げている。

 政府も近く国家安全保障会議を開いて河野氏から報告を受け、今後の方針を協議するという。重大な国策に関する意思統一はどうなっているのか、首をかしげる展開だ。

 本来、国会会期を延長して防衛相や首相が丁寧に説明しなければならない。実現可能性がないのであれば計画を白紙撤回すべきである。

 イージス・アショアは、イージス艦と同様のレーダーやミサイル発射装置で構成する弾道ミサイルの迎撃システムだ。地上配備型は常時警戒が容易とされ、政府は2017年に2基の導入を閣議決定した。

 秋田県と山口県の陸上自衛隊演習場が配備の候補地とされ、地元ではレーダーの電磁波による健康被害などへの不安が高まっていた。防衛省の調査資料で山の標高の誤表記が発覚したことも不信感を深めた。

 そもそも、十分な国会論議もないまま安倍政権が導入を決めた経緯がある。米国製の防衛装備品購入を迫るトランプ政権に応えた形で、防衛費拡大の要因となっている。

 防衛省は当初、費用を1基1千億円弱としていた。説明のたびに高くなり、今では維持費などを含めて計4千億円以上かかる見通しだ。

 今回、河野氏は周辺民家などの安全確保を停止の理由に挙げた。迎撃ミサイルを発射した後、ブースターが落下するが、演習場内に確実に落とせないことが判明したという。

 きのうの国会審議で、河野氏は改修には約2千億円の費用と約10年の期間が必要と述べた。当初の想定と異なる問題が判明したため、コスト増を回避する選択をしたとする。

 米国とは1800億円弱の契約を結び、約120億円を支払った。どちらにしても公費を無駄にする事態になりかねない。配備ありきで導入を進めた政権の責任が問われる。

 一方、警戒対象の北朝鮮や中国はイージス・アショアをかわす新型ミサイルを開発中とされ、配備の実効性に疑問を呈する見方もある。

 政府は「専守防衛」の国是に立ち返り、外交努力を含めた東アジアの安全保障戦略を描き直さねばならない。米国は秋の大統領選で現政権の政策が問い直される時期を迎える。平和国家としての日本の基本姿勢を改めてしっかり伝えるべきだ。

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