社説

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 新型コロナウイルスの国内感染確認とともに始まった通常国会は、きのう会期末を迎え、閉会した。野党は年末までの大幅延長を求めたが政府、与党は応じなかった。

 感染再拡大への備えや政府対応の遅れ、政権を取り巻く疑惑の解明など課題は山積している。国民に長期戦への覚悟を求めながら、丁寧な説明をせず、議論を避ける。閉会を急いだ安倍政権の姿勢は、国民を代表する立法府の軽視にほかならない。

 閉会中も国会は与野党を超えて行政監視と熟議に努め、コロナ禍と政権の迷走から国民の命と暮らし、権利を守り抜かねばならない。

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 政府のコロナ対策は、クルーズ船での感染封じ込め失敗に始まり、PCR検査の伸び悩み、個人や事業者向け支援策の遅れなどで厳しい批判を浴びた。根底に、苦境にある人々の実情との埋めがたいずれがある。

 象徴的だったのは、安倍晋三首相が第2次補正予算案を説明する記者会見で「空前絶後」「世界最大」などとコロナ対策の予算規模を自賛したことだ。実際にはシステム不備や申請手続きの煩雑さなどで、1次補正で決めた給付金の支給にも遅れが出ていた。必要なところに届かないのは制度設計に問題がある。

 国会で指摘されると、首相は官僚が用意した文書を読み上げたり、担当大臣に答弁を任せたりしてかわす場面が多かった。論点をすり替え、過ちを認めずに開き直る態度は以前からだが、今国会では「逃げ」の姿勢が印象に残る。

 使い道を定めない予備費を10兆円も積んだ2次補正には、国会軽視の姿勢が顕著に表れた。国の財政出動に国会の承認を必要とする「財政民主主義」をないがしろにし、政府への白紙委任を迫るものだ。

 与野党は週1回の閉会中審査で合意した。巨額予算の使い道を厳しく監視し、これまでのコロナ対策の成果を検証して次に生かすため、定期的な開催を徹底してもらいたい。

 安倍首相は秋の臨時国会召集を確約していないが、憲法53条の規定に基づいて野党が要求すれば、速やかに開催に応じるべきだ。

「1強」にもろさも

 コロナ禍は、社会が抱えるもろさをあらわにした。デジタル化の遅れ、セーフティーネットの粗さ、海外生産に依存しすぎた経済の弱みなどだ。コロナ後の社会像を描く上で避けて通れない課題だが、今国会での議論は深まらなかった。

 7年半にわたる「安倍1強」の政治にも変化の兆しが見える。

 首相は、安全保障関連法など世論を二分する政策を、意に沿う官僚を登用し、国会の「数の力」で押し切ることで実現させてきた。

 だが、コロナ対応では決定が二転三転し、混乱を深めた。異論を封じて突き進んできた1強政治は、謙虚さと柔軟性が必要な未知の危機に対しては十分に機能していない。

 減収世帯への30万円給付は公明党の抵抗に遭い、閣議決定を覆して一律10万円給付に転じた。長期休校の影響を帳消しにしようとした「9月入学制」も慎重論にあらがえずにすぐしぼんだ。全世帯への布マスク配布は国内外の冷笑を買った。

 官僚が首相官邸への忖度(そんたく)に気を取られ、本来の政策立案能力を失いつつあるとすれば深刻だ。国益を重んじ、信頼される官僚組織への再生は政治の責任と言える。

民主主義を鍛える

 批判に立ち止まる姿は、これまでの首相にはなかった。政権の体質を変えるチャンスととらえ、謙虚な政権運営を心がけねばならない。

 前半国会の焦点だった「桜を見る会」を巡る首相自身の政治とカネの問題や、森友学園問題で自死した近畿財務局職員の妻の告発、河井克行前法相夫妻の立件を視野に入れた公選法違反事件などの疑惑は決着していない。コロナ対策の専門家会議の議事録を作成しない問題は、政権の懲りない隠蔽(いんぺい)体質を物語る。引き続き国会でただすべき問題だ。

 一方で、コロナ禍が国民の政治への関心を高めた側面は無視できない。著名人も加わってツイッター上で抗議の声が広がったことで、検察庁法改正案は廃案に追い込まれた。

 緊急事態宣言による外出自粛や休業要請が続いた数カ月、多くの人が政治は生活に直結していることを実感しただろう。問題意識を持ち、声を上げる人が増えれば、それを変えられることも知った。

 この危機は、民主主義を鍛える場ともなる。国民の疑問や希望を政治に反映させる責務を、国会は見失ってはならない。

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