社説

  • 印刷

 理化学研究所が神戸・ポートアイランドに整備中のスーパーコンピューター「富岳(ふがく)」が、計算速度で世界一となった。先代の「京」が2011年に2期連続1位となって以来、日本勢のスパコンにとって9年ぶりの快挙である。

 着目すべきは、産業利用やビッグデータの処理能力など3部門でも「富岳」が首位となった点だ。世界のスパコンで初めて4冠を達成した。基本性能である計算速度だけでなく、ビジネスや社会課題の解決など、現実に即した使い勝手の良さが評価されたといえる。

 21年度から本格運用する「富岳」は、すでに新型コロナウイルスの関連研究を優先して稼働が始まっている。「京」の最大100倍の性能を生かし、せきなどの飛沫(ひまつ)が日常空間でどのように拡散するかのシミュレーションで早くも成果を出した。

 コロナ対策は人類全体が直面する課題だ。ワクチンや新薬の開発などに世界一の計算能力を生かし、大きな効果を上げてもらいたい。

 スパコンの開発は米国と中国が、国の威信を懸けて激しい競争を繰り返してきた。計算速度1位の座も12年に米国に抜かれ、以降は米中が交互に奪い合った。今回もベスト5には米中が2機ずつ名を連ねている。

 日本が首位となったのは、米中の次世代スパコン開発が遅れている間隙(かんげき)を縫った一面もある。手放しでは喜べない。

 米中は近く「富岳」を上回る新型機を投入する見通しだ。理化学研も「富岳」の後継機の研究を始めているが、スパコン開発が数年がかりであることを考えれば、トップに君臨し続けるのは容易ではないだろう。

 重要なのは、社会に役立つ研究成果を上げることだ。「京」はゲリラ豪雨の予想のほか、兵庫県西部の播磨科学公園都市にある大型放射光施設「スプリング8」などと連携して創薬、新製品開発などに取り組んだ。「富岳」もより幅広い企業や研究者が活用できるよう、官民のサポートを手厚くする必要がある。

 コンピューターの世界では、もはやスパコンも最先端とはいえなくなった。物理学の一分野である量子力学を応用する「量子コンピューター」が注目を集める。スパコンをはるかに上回る計算能力を持ち、米中の開発競争は政治的な対立の一因にもなっている。

 量子コンピューターの開発にも、スパコンは欠かせない。「富岳」の能力やこれまでのスパコン開発の蓄積を最大限に生かすことで、後れを取らないようにしたい。

 そのためには官民で研究者の育成に力を入れるとともに、十分な開発予算の確保が不可欠だ。

社説の最新
もっと見る

天気(8月13日)

  • 34℃
  • ---℃
  • 30%

  • 34℃
  • ---℃
  • 30%

  • 35℃
  • ---℃
  • 30%

  • 35℃
  • ---℃
  • 40%

お知らせ