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 政府は、新型コロナウイルスの感染者と濃厚接触した可能性を通知するスマートフォン向け「接触確認アプリ」の運用を始めた。個人情報を伏せた形で接触したという情報をスマホに送信する仕組みだ。

 新型コロナは感染初期に症状がなく、封じ込めが難しい。接触を伝える仕組みがあれば、医療機関の受診やPCR検査などを促す効果があるのではないか-。

 このアプリはそうした観点から開発された。スマホに無料でダウンロードでき、政府はクラスター(感染者集団)発生を早期に防ぐ手段として利用を呼び掛けている。

 ただ、国民の6割超が利用して初めて意味を持つ仕組みでもある。個人情報が守られるか懸念する声は根強く、不安や不信を払拭(ふっしょく)できなければ狙い通りに進まないだろう。

 スマホは一人一人が携帯する。その情報をたどれば行動や接触状況などが把握できる。そのため各国が新型コロナ対策に活用している。

 中国では、スマホの位置情報に防犯カメラ情報などのデータを連動させて感染者の行動を把握してきた。韓国でも感染者の隔離を徹底するため、自宅待機中に外を出歩けば警報音が鳴るアプリが開発された。

 ただ、日本では抵抗感を抱く人が少なくない。そのため、アプリではスマホの位置情報を取得せず、利用者の氏名や携帯番号なども収集しない。個人情報を国などが集中管理する形は避けたという。

 代わりに端末同士で情報をやりとりする通信技術を用い、1メートル以内に15分以上居合わせると互いのスマホだけに記録が残るシステムを採用した。「陽性判明」の情報は一斉送信され、接触記録のあるスマホだけが反応する。個々のスマホ内の記録も2週間後には自動消去される。

 ただ、自分が陽性だと分かった場合、結果をアプリに登録するかは利用者の意思に委ねられる。情報提供の動きが広がらなければ「絵に描いた餅」になる恐れがある。

 また、PCR検査が受けにくい状況を改善しなければ、通知された利用者の不安だけが拡散する。保健所の現場では、相談増による業務の混乱を心配する声もあるという。

 同様のシステムを導入したシンガポールでは、利用は国民の2割程度にとどまる。同じ仕組みを目指すフランスでも、世論調査で55%が「使用しない」と答えている。

 多くの国民に信頼されるには、情報保護や流出防止策を徹底して運用の透明度を高めるしかないだろう。データ乱用を第三者がチェックする仕組みも取り入れるべきだ。

 政府がどの程度信頼されているかも、このアプリで試される。

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