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 香港の自由を、中国は力ずくで押しつぶそうとしている。

 反体制的な言動を取り締まる「香港国家安全維持法(国安法)」が、中国の国会に相当する全国人民代表大会の常務委員会でスピード可決され、即日施行された。

 その翌日、強権ぶりは早速あらわになった。法に抗議するデモ隊と警察が衝突し、370人が逮捕された。うち10人は国安法違反とされ、かばんに「香港独立」と書いた旗を入れていただけの男性もいる。

 自由や人権を尊重しない習近平政権の姿勢に、強い憤りを感じる。到底、容認できない。

 1997年に香港が英国から返還される際、中国は「一国二制度」を50年間保証すると約束した。本土と異なる高度な自治や司法の独立を認める、との内容である。

 しかし、返還から23年で中国は国際公約を破り、有名無実化した。香港政府の頭越しに法成立を急いだのは、9月に行われる香港立法会(議会)の選挙で民主派の立候補を阻む思惑からだろう。

 国安法は、国家分裂、政権転覆、テロ活動などを処罰の対象としている。中央政府が直接取り締まれるよう香港に出先機関を置くほか、容疑者を本土で裁判にかけることも可能になった。

 香港の他の法律より優先することが明記される一方、何が違法かは分かりにくい。穏健な抗議活動も罪に問われる可能性がある。今回の大量逮捕は、香港だけでなく中国国内の民主化運動全体に対する見せしめとする意図がのぞく。

 米トランプ政権は、中国当局者へのビザ発給を制限するなどの対抗措置を打ち出した。中国は「内政干渉」と猛反発している。強硬姿勢は、米国との覇権争いで「一歩も引くつもりはない」という意思表示ともとれる。国際金融都市としての香港の機能が多少損なわれたとしても、本土との統合強化を押し進めるということではないか。

 新型コロナで世界経済は疲弊しており、米中対立が激化すれば制裁合戦などで打撃は計り知れない。双方に大国としての冷静さを求める。

 国安法には、香港で活動する国際組織や報道機関に対する管理強化も盛り込まれた。中国に都合の悪い報道が制約される恐れがあり、看過できない。

 自由と自治を求める香港の人たちを孤立させないためにも、国際社会は中国へ強く働きかけ続ける必要がある。日本政府は遺憾の意を表明したが、経済関係に配慮して手をこまねいているように映る。各国と連携し、粘り強く香港政策の再考を求めるべきだ。

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