社説

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 兵庫県立神戸高塚高校(神戸市西区)で、登校指導中の男性教諭が閉めた校門に女子生徒=当時(15)=が挟まれ死亡した事件から、6日で30年となった。

 生徒の未来を育むはずの学校で、よりによって教員の手で若い命が奪われた。痛恨の出来事であり、振り返るといまも胸が痛む。

 6日は雨の中、市民団体が追悼集会を開いた。校門前に花を供え、卒業生らが思いを語った。職員会議では教員らが黙とうをささげた。

 同校は事件の反省から、生命の尊厳と人間尊重の精神を基盤にした教育方針を掲げる。その理念を今後もしっかり受け継いでもらいたい。

 一方、会報の発行などをしてきた市民団体が、メンバーの高齢化を理由に活動に区切りをつけるという。事件の風化が進まないよう、社会全体でこの悲劇と教訓を伝えていくことが重要だ。

 事件では、登校してきた1年生の女子生徒が、遅刻指導として男性教諭が閉めた鉄製門扉に頭を挟まれ、死亡した。懲戒免職になった男性教諭は、業務上過失致死罪で執行猶予付きの有罪判決を受けた。

 だが事件は個人の責任にとどまるものではなく、厳しい校則を生徒に守らせる管理教育の問題が背景にあったことは忘れてはならない。

 事件後、生徒指導や校則についての論議が全国的に広がった。

 兵庫県教育委員会は各学校に校則の見直しを求めた。翌年の1991年には教育長通知を出し、画一的な指導を改め、生徒に向き合う指導方針を定めた。当時の文部省も校則の実態調査を進めた。

 2010年に文部科学省がまとめた教員用の「生徒指導提要」では、教員がいたずらに規則にとらわれ、守らせることのみの指導になっていないか注意を払うべき、と述べている。また、校則は社会常識などを踏まえ、絶えず積極的に見直さなければならないとしている。

 しかし近年、茶色の地毛を黒く染めさせるなど、理不尽な「ブラック校則」が各地で疑問視されている。昨年、本紙が記事を載せたところ、読者からの反響で、下着の色の指定、髪の三つ編みの禁止、タイツの禁止-などを強いる学校が県内にもあることが分かった。

 ルールを守らせること自体が目的ではと思わせる内容だ。生徒指導を巡る問題は今も根強く残り、解消に向かう気配はない。

 教育基本法は「個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養う」と定めている。学校はこの原点を常に確かめ、生徒一人一人の命と人格を尊重しなければならない。

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