社説

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 九州を中心に大きな被害をもたらした豪雨災害は発生から10日となる。死者・行方不明者は約80人、1万3千棟以上の住宅が浸水や土砂崩れなどで被災した。

 停滞する梅雨前線の影響で、今後も西日本から東日本にかけて大雨の恐れがある。長雨で緩んだ地盤は、少しの雨でも土砂崩れなどを起こす危険性が高い。今は落ち着いている地域でも警戒を緩めず、一人一人が命を守る行動を心がけたい。

 被害状況が明らかになるにつれ、高齢者の避難の難しさが課題として浮上してきた。

 福岡、熊本、大分3県で亡くなった人の大半が65歳以上だった。最も多い64人の死亡が確認された熊本県は約8割の死因が溺死だったと公表した。半数以上は屋内で発見されたという。急激に雨量を増した未明の雨で、逃げ遅れた高齢者がいかに多かったかが分かる。

 同県球磨村の特別養護老人ホーム「千寿園」では入所者約50人が2階に避難して助かったが、14人が間に合わずに亡くなった。エレベーターはなく、夜勤の職員数人が地域住民の手助けで車いすの利用者らを運ぶ途中、水かさが急増したという。

 近年多発する水害では、地価が安いなどの理由でリスクの高い場所にある高齢者施設の被災が目立つ。

 2016年の台風で岩手県岩泉町の高齢者グループホームが浸水し入所者9人が亡くなったのを受け、国は翌年、水防法などを改正した。浸水想定区域の施設に避難計画の作成と訓練を義務付けたが、今年1月時点で作成率は45%にとどまる。

 千寿園は避難計画を作り、訓練もしていた。だが、夜間や2階への避難を想定していたのか、園の当日の対応とともに検証が必要だ。

 実効ある計画や訓練ができていない施設は全国にあるとみられる。行政は施設任せにせず、専門家の助言や地域の協力も得て、実情に合った改善に取り組まねばならない。

 危険な場所での福祉施設などの新設を禁じる改正都市計画法も6月に成立し、2年以内に施行される。ただ既存施設には、補助金で移転を促すものの強制力はない。

 移転が難しい施設も多い。立地の危険度を十分に認識し、早めの避難を徹底しなければならない。併せて居室を2階以上にしてスロープを付けるなど、安全な場所に逃げられなくても、施設内で命を守り通せる対策を急ぐべきだ。

 常識が通用しない災害が頻発している。わずかな時間で事態は急変し、警報や避難指示が遅れる場合もある。各家庭でも避難のタイミングを逃さないよう、雨の降り方などの異変に細心の注意を払いたい。

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