社説

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 政府は国内旅行料金の半額相当を割り引く観光支援事業「Go To トラベル」の内容を見直した。新型コロナウイルスの感染者が東京都を中心に急増しており、都内発着や都民の旅行は割引の対象外とする。

 感染者は神奈川県や千葉県など、首都圏全体で増えている。東京だけを対象から除外しても、どれだけ実効性があるのかは疑問だ。

 きのうの東京の新規感染者数は293人と、過去最多を更新した。兵庫県では24人とほぼ3カ月ぶりの高水準になり、県は感染拡大の「警戒期」に入ったと発表した。

 感染増の兆しは全国に広がり、第2波の襲来が現実になりつつある。経済対策は重要だが、ここで前のめりになって感染拡大に拍車がかかれば、再び休業要請などの荒療治が必要な事態になりかねない。

 政府は重大な局面に立っているとの危機感を持って、施策のあり方を根本的に見直すべきだ。

 「Go To トラベル」は、4月末に成立した本年度1次補正予算に約1・7兆円が計上された。8月実施が予定されていたが、今月になって22日開始に繰り上がった。

 疑問を抱くのは、専門家に諮らず前倒しが決まった点だ。16日の衆院予算委では政府分科会の尾身茂座長が「全国的なキャンペーンをやる時期ではない」と明言している。

 最終的には東京除外を分科会に諮り了承を得たが、開始直前に駆け込みでお墨付きを得ようとした印象が否めない。科学的知見に基づく政策立案の重要性が、政府内にいまだ浸透していないのではないか。

 赤羽一嘉国土交通相は、若者や高齢者の団体旅行も対象外とする方針を示した。全国的に新規感染者の多くを若者が占めており、高齢者に感染すれば重症化のリスクが高い点を理由に挙げた。しかし観光庁はその後、線引きが困難として可否を観光業者に委ねると軌道修正した。制度設計が十分煮詰まっていない証しで現場の混乱は避けられない。

 そもそもこの施策は、拡大が収束し国民の不安が払拭(ふっしょく)された段階で行うと閣議決定している。感染が拡大する中、例外条件を設けてまで実施するのは趣旨に反する。

 コロナ禍で観光関連産業は深刻な利用減に直面している。影響は旅館や集客施設にとどまらず、交通機関や飲食店、農漁業者などにも及ぶ。

 いつまでも自粛モードでは雇用にも響きかねず、地域内や近隣県からの観光客に対象を絞って補助する自治体は数多い。

 経済対策と感染防止を両立させようとするこうした地域の主体的な努力こそ、政府が積極的に後押しする必要がある。

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