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 藤井聡太棋聖が誕生した。17歳11カ月でのタイトル獲得は将棋の史上最年少である。

 第91期棋聖戦5番勝負の第4局で渡辺明二冠を破り、3勝1敗でタイトルを奪取した。1990年に屋敷伸之九段が残した18歳6カ月の最年少記録を30年ぶりに更新した。

 新型コロナウイルスの感染再拡大や各地の豪雨災害など暗いニュースが続く中、曇りがちな人々の気持ちを晴らしてくれる快挙だ。心から祝意を贈りたい。

 敗れた渡辺二冠は「現役最強」と称される。そのトップ棋士が「内容的に競ったところで負けている。すごい人が出てきたなという感じだ」と評した。第2局の中盤では人工知能(AI)の思考を超える妙手を繰り出し、周囲を驚かせた。若き才能の開花で、将棋界はまた新たな時代を迎えたと言える。

 藤井棋聖は対局直後、「5番勝負で勉強になったところが多い。今後に生かしていきたい」と落ち着いて語った。謙虚な姿勢が、プロ入りから4年に満たない期間での急成長を支えてきたのかもしれない。

 同時に「責任ある立場になる。楽しんで見ていただけるよう、精進していい将棋を指したい」と話し、早くもタイトルホルダーとしての自覚を見せた。表情などには高校生棋士の初々しさが残るものの、精神的な成熟ぶりをうかがわせる。

 神戸在住の谷川浩司九段は、藤井棋聖を豊島将之竜王・名人、渡辺二冠、永瀬拓矢二冠とともに「棋界4強の1人」と位置づけ、当面は4人によるタイトル争いが続くと予想する。今後このライバルたちとの切磋琢磨(せっさたくま)が、さらなる成長の糧となるに違いない。

 愛知県瀬戸市出身の藤井棋聖は、名古屋市在住の杉本昌隆八段に弟子入りし、2016年に最年少の14歳2カ月でプロ入りした。杉本八段は故板谷進九段門下だが、東海地方にタイトルを持ち帰るのは、板谷一門の長年の悲願だったという。

 杉本八段は、東京や大阪から遠い藤井棋聖の環境は決して恵まれていないとし「それでもこれだけ強くなれる。その活躍は、夢を持つ地方の少年たちに希望を与えるはず」と述べる。今回の快挙が将棋界の活況につながるだけでなく、地方の励みになればなお素晴らしい。

 藤井棋聖は王位戦7番勝負でも木村一基王位に挑戦中で、第2局を終えて2連勝している。木村王位は昨年、7度目のタイトル挑戦で悲願を達成した。初タイトル獲得が46歳3カ月というのは最年長記録だ。

 木村王位の初防衛か、藤井棋聖の最年少二冠か。これからの対局がますます楽しみになった。

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