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 内閣府は国と地方の基礎的財政収支(PB)が黒字化する時期が、これまでの2027年度から29年度以降にずれ込むとの試算を示した。

 PBは、税収などの歳入と政策経費のバランスを示す。黒字なら、歳入の範囲内に経費を抑えたことになり、財政再建の一歩になる。当初、政府は20年度の黒字化を掲げていたが5年先送りした経緯がある。

 今回の試算は、生産性向上などで高成長が続くと想定したケースでも25年度に7兆3千億円程度の赤字が残るとした。再び目標の修正を迫られる事態と言わざるを得ない。

 コロナ禍による景気低迷と税収減が主な要因だ。感染拡大が続けば、追加対策が必要になり赤字がさらに膨らむ可能性もある。

 ところが政府内には、経済成長や歳出の見直しなどで「25年度のPB黒字達成は可能」との見方がある。コロナ禍前の19年度予算でもPBは10兆円近い赤字となっており、あまりに楽観的と言うしかない。

 PB黒字化を重視するなら、コロナ関連施策であっても実効性を厳しく見極めるなど、財政再建の旗は降ろさないという断固たる決意を行動で示す必要がある。

 しかし、最近の政府の動きには財政再建を避けて通ろうとするふしすらうかがえる。

 先日まとめた経済再生運営の指針「骨太の方針」では、コロナ禍に対応した行政のデジタル化や、与党からの要望が強かった国土強靱(きょうじん)化など多岐にわたる施策が40ページ以上も盛り込まれた。一方、財政再建に関する記述は例年より大幅に減り、PBの黒字化目標は明記されなかった。

 21年度予算編成の概算要求方針では、コロナ関連施策を上限のない別枠とした。過去最大を更新し続けている歳出額がさらに膨らみ、国債の発行に歯止めがきかなくなることが懸念される。

 先の見えないコロナ禍で、十分な医療体制を維持し、苦境に立つ事業者を支える。とりわけ雇用を守る施策が必要なのは言うまでもない。

 しかし感染の実態や現場のニーズを十分に見極めないまま、予算規模を強調するためのメニューが並ぶのでは使途に疑問符が付く。「アベノマスク」や一連の「Go To」施策を巡る混乱は典型だろう。

 いくら巨額の予算を投じても、政策に信頼が得られなければ、この危機は乗り越えられない。そのことを安倍政権は認識するべきだ。

 国の借金にあたる長期債務は900兆円に上り、負担は将来世代が背負わされる。コロナ危機の克服に必要な費用を確保しつつ、長期的な財政バランスをどのように描くのか。国民への丁寧な説明が必要だ。

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