社説

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 1985年の日航ジャンボ機墜落事故から12日で35年となった。520人の乗客乗員が亡くなるという惨事は、単独事故としては今も世界の航空史上最悪である。大切な人を失った遺族の悲嘆は、月日を重ねても変わることがないだろう。その心情にあらためて思いを寄せたい。

 新型コロナウイルス感染拡大で、日航機が墜落した群馬県上野村などは追悼慰霊式を縮小した。昨年の台風による登山道被害もあり、慰霊登山は時期を分けて行われた。

 標高1500メートルの墜落現場は安全を願う聖地となった。明石歩道橋事故や尼崎JR脱線事故の遺族らも訪れている。日航は事故後に入社した社員が9割を超えており、新入社員は必ずここに登る。今年はコロナ禍の影響を受けたが、記憶は今後も継承していかなければならない。

 墜落した123便は羽田から大阪(伊丹)に向かう途中、垂直尾翼や操縦系統が損壊して操縦不能となった。その原因となったのは、米ボーイング社による後部圧力隔壁の修理ミスだったとされる。

 ただ、日航や旧運輸省も検査でそのミスを見逃していた。当時書類送検された担当者の複数が「事故を防げた」と供述していたことも近年明らかになった。一方で「ボーイングに任せた」との責任回避や、部署同士が責任を押し付け合う姿勢もうかがえた。事故が風化し、無責任な体質が再び生じることがないよう航空各社には強く求めたい。

 残念ながら日航機墜落後も、航空機事故はなくなっていない。

 2018年と19年、ボーイングの最新鋭機737MAXがエチオピアなどで相次いで墜落し、各国で運航停止に追い込まれた。自動失速防止装置の誤作動が原因だという。

 深刻なのは、工場が過密日程を強いられていたといった内部の証言から安全軽視の姿勢が露呈したことだ。ボーイングが日航機事故の責任を今も重く受け止めているのか、疑問を抱かざるを得ない。

 懸念は技術面だけでなく、人の面にもある。18年に日航の副操縦士が大量飲酒で逮捕されたのを機に、全日空、スカイマークなどでも飲酒不祥事が発覚した。国土交通省が事業改善命令などを出す事態となった。多くの乗客の命を預かっている自覚があるとはとても思えない。

 航空機メーカーや航空各社はコロナ禍によって巨額の赤字を抱えた。しかし、そのために安全対策のコストを減らすことがあってはならない。経営が厳しいときだからこそ業務を点検し、安全な空への努力を地道に重ねるべきだ。悲劇が起きてからでは決して取り返しがつかないことを、35年前の事故が教えている。

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