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 強権的な法律が、その本性をあらわにした。

 香港国家安全維持法(国安法)の違反容疑で、中国に批判的な香港紙「蘋果(リンゴ)日報」創業者の黎智英氏と日本でも知られる民主活動家の周庭氏らが警察に逮捕された。

 外国勢力と結託して国家分裂をあおった疑いなどがかけられている。しかし、具体的にどの行為を指すのかは明らかになっていない。黎氏らはいったん保釈されたが、起訴される可能性がある。

 現地からの報道は異様な光景を映し出した。200人近い警察官がリンゴ日報本社の編集部を閉鎖し、取材資料を押収した。

 「一国二制度」の下、香港に保証されているはずの表現や報道の自由を踏みにじる暴挙にほかならない。強く抗議する。

 国安法は外国人や香港以外での行為も処罰の対象にしている。既に、米国籍を持つ香港出身の民主活動家ら6人が指名手配された。

 自由や民主主義といった普遍的価値観にそぐわないばかりか、国際社会への危険な挑戦といえる。

 国安法は6月30日、中国政府が香港議会の頭越しに成立させた。最高刑は終身刑だ。文面では何が違法行為か分かりにくく、民主派を排除する口実に使われかねないとの懸念が当初からあった。

 このたびの逮捕は、民主化運動の著名人を標的にすることで香港社会全体を威嚇する狙いだったのだろう。周氏は保釈後の会見で「取り調べは非常に怖かった」と述べた。

 7月末になって香港政府は9月に予定されていた立法会(議会)選挙の1年延期を発表した。新型コロナウイルスの感染拡大を理由に挙げるが、国安法が争点となり民主派が勝つのを警戒したとみられる。

 その直前には選挙管理当局が民主派12人の立候補資格を取り消した。国安法を支持していないことなどが理由という。香港の選挙制度は形骸化の危機にある。

 米トランプ政権は香港政府のトップらに制裁を科し、中国も対抗して米上院議員らを制裁対象にした。習近平指導部の強硬姿勢は、国際的に孤立しても民主派つぶしを優先させるという意思表示ではないか。

 香港の「本土化」が着実に進みつつあるが、発展の土台となったのは高度な自治や司法の独立だ。その認識をなぜ持てないのか。

 中国との関係改善を優先してきた日本も立ち位置が問われる。各国と連携を強め、習指導部と香港政府に対して言論弾圧を即刻やめるよう、粘り強く働きかけるべきだ。自由と自治を求める香港の人たちを、決して孤立させてはならない。

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