社説

  • 印刷

 自民党総務会は、辞任する安倍晋三首相の後任を選ぶ党総裁選で全国の党員・党友による投票を見送ることを決めた。14日に両院議員総会を開き、国会議員と地方組織代表による簡略方式で行うという。

 総裁選は通常、国会議員394票と、同数に換算した党員・党友投票の結果で争う。党則には党員投票を省略できる緊急時の特例があるが、その場合、地方票は47都道府県連に3票ずつの計141票に減り、国会議員票の比重が7割を超す。

 簡略方式では党員の投票権が奪われ、地方の声が反映されにくいなどとして、兵庫県連を含む複数の地方組織や若手国会議員が党員投票の実施を求めた。当然といえる。

 総裁選は事実上、首相を決める手続きであり、党員だけの問題にとどまらない。長く続いた「安倍1強」体制で染みついた、政権の内向きなイメージを一新するためにも、開かれたプロセスで行うことは不可欠だったはずだ。

 新型コロナウイルスの感染拡大で医療現場は疲弊し、経済や暮らしが大きな影響を受けている。幅広い国民の支持を得て、乗り切らねばならない難局にある。だからこそ、現場を知る地方の声をありのままに受け止めるべきだ。党執行部の姿勢には首をかしげざるを得ない。

 党執行部は、安倍首相の突然の辞任表明が「緊急を要するとき」の特例に当たると理由を説明した。

 コロナ対応は予断を許さないものの、安倍首相は職にとどまり、辞意と同時に当面の追加対策を公表している。野党が求める臨時国会の召集に応じていないので、審議日程に追われることもない。後継選びに要する時間が、いま以上に深刻な政治空白を招くとは思えない。理由はほかにあるのではないか。

 総裁選にはきのう、岸田文雄政調会長、石破茂元幹事長が立候補を表明した。ところが党内の主要派閥は早々に菅義偉官房長官への支持を決め、投票を待たずして大勢は決したかのようだ。この構図を地方票の動向で崩されたくないのだろう。

 菅氏は、きょう正式に立候補表明する意向だが、政治理念や政策はまだ明らかになっていない。中身は度外視して「勝ち馬」に乗ろうとする派閥の論理が、国民の目にどう映っているかを省みなければならない。

 今回の総裁選は、7年8カ月続いた安倍政権の何を引き継ぎ、何を改めるのかが最大の争点となる。迷走が続いた国のコロナ対策を検証し、どう立て直すかも問われる。

 国民に向けた論戦の場を十分確保するのは政権党の責任である。選挙戦で政治姿勢を明らかにし、政策を競い合うべきだ。

社説の最新
もっと見る

天気(10月25日)

  • 20℃
  • 12℃
  • 0%

  • 20℃
  • 10℃
  • 10%

  • 20℃
  • 12℃
  • 10%

  • 22℃
  • 10℃
  • 10%

お知らせ