社説

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 2012年12月の発足から8年近く続いた第2次安倍政権は、経済政策を憲法改正や外交と並ぶ看板に位置づけてきた。

 安倍晋三首相は就任早々、金融緩和と財政出動、成長戦略の「三本の矢」を掲げ、一連の政策を自ら「アベノミクス」と称した。一時はデフレ脱却への期待が株価を押し上げ、景気も回復に転じた。

 だが景気拡大の勢いは弱く、多くの国民がメリットを実感できたとは言い難い。給与増などをもたらす成長戦略は道半ばと言える。今年に入ってのコロナ禍で、状況はさらに悪化する可能性が否めない。

 自民党総裁選では、アベノミクスの継承か、軌道修正かが焦点の一つとなる。まずその限界を率直に認め、生活の底上げにつながる経済政策のあり方を議論する必要がある。

 金融緩和と財政出動は、不況時のカンフル剤に例えられる。政府や日銀が社会にお金を供給し、経済を一時的に勢いづけるからだ。その間に民間の研究開発や事業展開を促し、景気回復を加速するのが、安倍政権の戦略だった。

 カンフル剤はすぐに効果が表れる半面、依存しすぎると副作用も大きい。巨額の国債を発行して政府予算の規模は毎年膨らみ続けた。首相と気脈を通じる黒田東彦総裁の下、日銀は積極的に国債を買い入れたが、2%の物価上昇目標は達成できず、金利低下の長期化で地域金融機関の経営を圧迫し始めた。

 一方でこの間、飛躍的に拡大したスマホやSNSなどのIT市場で気を吐くのは米中韓の企業ばかりだ。かつての高度成長を支えた家電や自動車と異なり、日本勢の存在感は薄い。景気が18年11月に後退局面に入ったのは、民間経済の活性化が十分でないままカンフル剤の効力が薄れた結果と言える。

 首相は春闘での賃上げや携帯電話料金の引き下げなどを企業側に直接求め、政権の実績とアピールしてきた。しかし政府の本来の役割は、賃上げ可能な環境を整え、料金引き下げにつながる競争ルールに見直すことだ。「お上」が民間活動に横やりを入れる統制下のような発想で、企業の活力を引き出し、競争力を強化できるかには疑問が残る。

 予算拡大による赤字の膨張に、コロナ対策費が拍車をかける。政府は財政健全化目標を先送りし、将来世代に重い負担がのしかかる。

 アベノミクスの弊害を、安倍政権は直視しようとしなかった。その検証を抜きにしたままでは、副作用の痛みはさらに深くなる。

 次期政権はどのように対処するのか、総裁選で各候補は明確に示さなければならない。

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