社説

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 歴代最長の政権を支えた「安倍1強」政治をどう総括するかは次期政権の姿勢を如実に映し出す。自民党総裁選で最大の関心事である。

 あらためて1強が確立した過程とその功罪を振り返ってみたい。

 強さの源泉はなんといっても、安倍晋三首相が2012年衆院選から計6回の国政選挙に全勝して得た衆参両院の「数の力」だ。

 消費税増税の再延期を掲げた16年参院選の勝利で「改憲勢力」が衆参両院で3分の2を超え、議院内閣制における1強は確立した。

 さらに、14年に新設した内閣人事局を通じて中央省庁の幹部人事を事実上握った。政権の意に沿う官僚を取り立て、異を唱える者は更迭する。官僚組織が首相官邸の顔色をうかがう図式が定着していく。

 安倍政権の前半は、この力を安全保障政策の転換などに注ぎ、国民の反対が多い法律も強引に成立させた。支持層には首相のリーダーシップが頼もしく映ったかもしれない。

 一方で、異論や批判を排除する姿勢は国民の分断と対立をあおった。それを印象付けたのが17年夏の東京都議選の街頭演説だ。

 首相は「退陣」を叫ぶ一部の聴衆を指さし、「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と言い放った。批判勢力を「敵」とみなして攻撃する姿は、理想を語り、粘り強く合意に導くリーダー像には程遠い。

 首相は国会軽視の姿勢を隠そうともせず、自らヤジを飛ばして注意を受けることもあった。野党は対決姿勢を強め、与党は議論を避ける。国会で「言論の府」らしい論戦がほとんど聞かれなくなった。

 長く続いた1強政治への「慣れ」は、民主主義社会を支える自由闊達(かったつ)な議論の場を侵食しつつある。

 後半は長期政権のおごり、緩みがあらわになった。17年以降、森友・加計学園、桜を見る会を巡る疑惑が相次いで浮上した。いずれも首相に近い人物が優遇され、行政の公正さがゆがめられたと疑われている。

 辞任表明の会見で安倍首相は「政権の私物化は全くない」と反論した。だが国会で何度追及されても正面から答えず、自ら疑惑を解こうとする姿勢に欠けたのは明らかだ。

 財務省が改ざんに手を染め、ほかにも真相解明につながる資料が廃棄されるなどルールを外れた公文書管理がまかり通った。その結果、疑惑はくすぶり続けている。

 不都合な問題を覆い隠すことに政権の体力を奪われ、歴代最長にふさわしい政治的遺産を残せなかったとすれば、首相の責任は重い。

 長期政権の「負の遺産」を清算し政治への信頼を取り戻す。総裁選をその好機としなければならない。

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