社説

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 東日本大震災で起きた東京電力福島第1原発事故は、日本が原発依存から再生可能エネルギーの普及にかじを切る契機になる可能性があった。しかし、安倍政権は原発推進の方針を維持した。国民の根強い原発不信や被災地の現状を直視せず、課題を先送りしてきた責任は大きい。

 政権の姿勢を象徴するのが2013年、五輪開催都市を決める国際オリンピック委員会総会での安倍晋三首相の発言だ。福島第1原発の汚染水漏れについて「状況はコントロールされている」と世界に向けて言い切った。

 実際には、原子炉内に残る溶融核燃料(デブリ)を冷却した汚染水は増え続け、それを浄化した処理水は120万トンを超えた。処理水を保管するタンク群の容量は、2年後に限界に達するとされる。

 処理水は海洋放出する案などが検討されているが、放射性物質トリチウムを含むため、地元漁業者などが風評被害を懸念している。当時も今も、コントロール下にあるとはとても言えない。

 原発事故から9年、福島県内の帰還困難区域では避難指示が一部解除された。だが多くの住民はいまだに帰還できず、避難生活を強いられている。除染で発生した汚染土は1400万立方メートルあり、今後も増える。国は県外で最終処分する方針を示しながら処分地は決まっていない。

 一方、第1原発の廃炉作業は高い放射線量などに阻まれて工程が遅れ、完了への道筋は見通せない。来年、2号機のデブリ取り出しに着手するものの、1号機ではデブリの現状さえ確認できていない。

 18年、4年ぶりに見直したエネルギー基本計画で政府は、原発を「重要なベースロード電源」と位置づけ、電源構成比率で20%以上とする目標を堅持した。

 それには20~30基の再稼働が必要となるが、事故後に再稼働したのは5原発9基のみだ。テロ対策施設の完成遅れなどでその後の運転停止も相次ぐ。この先も原発に依存する計画の破綻は目に見えている。

 使用済み核燃料を再処理して使う核燃料サイクル政策の行き詰まりも明らかになっている。各地の原発などには1万8千トン以上の使用済み核燃料がたまっている。再処理工場は稼働しておらず、その後に残る「核のごみ」も行き先が定まらない。

 エネルギー政策を巡っては、日本は石炭火力発電も維持する方針で、国際的な「脱石炭」の流れからも後れを取っている。

 従来の政策を踏襲するだけでは無責任と言わざるを得ない。次期政権は持続可能なエネルギー確保の展望を明確に示すべきだ。

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