社説

  • 印刷

 安倍政権が看板に掲げた「女性活躍」は社会の関心を集めた。同時に当の女性たちを困惑させ、落胆させてもきた。

 2013年2月、安倍晋三首相は施政方針演説で「全ての女性が輝ける国づくりを進める」と述べた。2カ月後に発表した成長戦略では「女性の活躍が中核をなす」と強調し、保育所の待機児童ゼロを据えた。

 歓迎した女性は少なくない。「正面から女性施策を取り上げるのは画期的」とも評価された。

 一方でいぶかしむ声もあった。無理もない。首相は、女性の社会進出を重視しない保守的な家族観の持ち主とみられていたからだ。

 男女の固定的な性別役割を押しつけない「ジェンダーフリー」という考え方がある。首相になる前、安倍氏はこれを真っ向から否定する自民党内のプロジェクトチームの座長だった。「父親が育児休業を取る必然性はない」などと主張していたグループである。

 期待と半信半疑が交錯する中で進められた女性活躍をあらためて振り返ると、経済成長第一の姿勢が鮮明に浮かび上がる。

 「女性が立ち上がれば日本は成長できる」と首相は国内外の投資家にアピールしてきた。人口減の日本が持続的に成長するには働く女性を増やす必要がある、というわけだ。

 性別にかかわらず、だれもが能力を発揮できる機会が持てる社会を目指す。そのことに異論はない。

 ところが、安倍政権の政策には男女平等や男女共同参画といった視点が乏しいといわざるを得ない。

 労働力として活用することを女性活躍と言い換えている-。女性たちの困惑と落胆は、そうした思いに端を発しているのでないか。

 首相はアベノミクスによる雇用拡大を誇るが、顕著に増えたのは非正規雇用であり、その多くを女性が占める。「全ての女性が輝く」と言いながら、女性の貧困への関心は薄いように映る。

 国際的にも際立つ政治や経済の「男性中心」を是正しようとする本気度は全く伝わってこない。

 企業などに女性登用の計画策定を義務付ける「女性活躍推進法」や、候補者をできるだけ男女同数にするよう政党に求める「政治分野の男女共同参画推進法」が施行された。だがいずれも強制力はない。選択的夫婦別姓にも後ろ向きだ。

 一連の政策は、男女格差が根強く残っている現状を可視化した。皮肉だが、それが最大の「功績」といえるかもしれない。

 大仰なかけ声はもういい。女性も男性も個人として尊重される社会に向けた実効策こそが必要だ。

社説の最新
もっと見る

天気(10月25日)

  • 20℃
  • 12℃
  • 0%

  • 20℃
  • 10℃
  • 10%

  • 20℃
  • 12℃
  • 10%

  • 22℃
  • 10℃
  • 10%

お知らせ