社説

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 安倍晋三首相は政権に復帰した2012年末、「日本外交を立て直す」と強調した。それから7年8カ月。「積極的平和主義」や「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」をうたい、訪問した国や地域は80を数える。

 長期政権は、継続的な外交の取り組みを可能にした。大国のトップと個人的な関係を築くなど、安倍外交が国際社会における日本の存在感を高めた側面はあるだろう。

 だがそのことが、政治的遺産(レガシー)と呼べる成果に結びつかなかった。次の政権は負の遺産ともいえる課題に向き合わねばならない。

 首相自ら「戦後政治の総決算」と位置付けた日本人拉致と北方領土の問題は行き詰まったままだ。

 北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長に無条件の対話を呼びかけるが反応はない。今年、拉致被害者で神戸市出身の有本恵子さんの母嘉代子さんと、横田めぐみさんの父滋さんが亡くなった。被害者家族は高齢となっており、解決は急務だ。

 ロシアのプーチン大統領との会談は24回に及んだ。経済協力をてこに事実上、4島一括返還から2島返還にかじを切り打開をもくろんだが、ロシアは強硬姿勢を見せている。

 終始一貫して際立ったのは対米追従の姿勢である。

 軍拡を進める中国へのけん制もあり、米国との同盟強化を急いだ。憲法解釈を曲げて集団的自衛権の行使を一部認める安全保障法制を成立させたのも、そのためだろう。

 強引な手法は、国民の間に深刻な意見の対立や分断を招いた。その禍根はあまりに大きい。

 ともにゴルフを楽しむなど首相はトランプ大統領との「蜜月」をアピールしたが、相手はディール(取引)優先だった。最新鋭ステルス戦闘機など巨額の武器購入を迫り、首相は押し込まれる形になった。

 近年の米中対立は、国際社会に大きな影を落とす。米国の国力が相対的に低下する中で日本の対応が対米追従だけでは不十分だが、香港やウイグルでの人権弾圧など中国の強権的な振る舞いも看過できない。

 首相が招請した習近平中国国家主席の国賓訪問は、コロナ禍で延期となっている。主張すべきは主張しつつ、米中との適切な間合いを探り、両国の関係改善も促すのが次期政権の最重要課題だ。

 韓国とは戦後最悪といわれるほど関係が冷え込んだ。慰安婦問題や元徴用工訴訟をめぐる対立は、貿易や安全保障に影響を及ぼしている。この現状を放置してはならない。

 「重要な隣国」と位置付けながらも、対話が圧倒的に不足している。首相交代を関係修復につなげる努力が欠かせない。

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