社説

  • 印刷

 自民党総裁選で、「安倍路線の継承」を掲げた菅義偉官房長官が圧勝した。16日召集の臨時国会で、安倍晋三首相の後継首相に指名され、新内閣を発足させる。

 自民党トップの交代は野党時代の2012年9月以来、実に8年ぶりだ。長期に及ぶ安倍政権の功罪を検証し、批判を招いた強引な手法や政策を改める。政治を軌道修正する重要な機会となるはずだった。

 だが自民党執行部にそうした問題意識は薄かった。党内の主要派閥が先を争って菅氏支持に走り、コロナ禍を理由に党員・党友投票を省略したのがその表れと言える。

 菅氏は国会議員票の約7割、地方票の約6割を獲得し、路線の修正や転換を訴えた岸田文雄政調会長、石破茂元幹事長を大差で退けた。権力維持を優先する「派閥の論理」が幅広い議論を封じた格好だ。

 検証なき継承がもたらすのは、安定とは限らない。菅氏は、好転した経済指標を並べて経済政策アベノミクスの成果をアピールする姿勢に徹したが、地方や中小企業は果実が行き届いた実感を得られていない。

 コロナ対策では国民ニーズとのずれが現場を混乱させる場面が目についた。菅氏は、全国知事会などが求めている特措法の改正は「感染収束後」との構えを崩していない。

 森友、加計学園、桜を見る会を巡る疑惑では公文書の改ざんや廃棄が発覚し、行政の公正さが揺らいでいる。菅氏はいずれも「解決済み」との立場で真相解明には消極的だ。

 限界が指摘される政策をそのまま進めれば、国民生活を危機にさらす恐れがある。異論に耳を傾けない姿勢を続けるなら、政治への信頼は取り戻せないだろう。

 菅氏は総裁就任の会見で「おかしいところは見直していく」と述べた。安倍政権の中枢を担ってきた責任を自覚し、耳の痛い指摘にも謙虚に向き合うべきだ。

 気がかりなのは、菅氏がどんな国を目指すのかが見えてこない点だ。

 ふるさと納税や携帯電話料金の値下げなど自らが推し進めた個別政策には饒舌(じょうぜつ)だが、中長期的なビジョンは語ろうとしない。

 外交手腕は未知数だ。その点を討論会で指摘され、「電話協議のほとんどに同席している」などと色をなして反論したのは、自信のなさの裏返しともとれる。

 力説する「縦割り行政、既得権益、前例主義の打破、規制改革」にしても、手段であって目的ではない。重要なのは、これによって何を成し遂げるのかである。

 菅氏は次期首相として、自らの政治姿勢と国のあり方を国民に向けて率直に語らねばならない。

社説の最新
もっと見る

天気(10月25日)

  • 20℃
  • 12℃
  • 0%

  • 20℃
  • 10℃
  • 10%

  • 20℃
  • 12℃
  • 10%

  • 22℃
  • 10℃
  • 10%

お知らせ