社説

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 菅義偉首相が、政権の看板政策に位置づける「デジタル庁」新設について来年の通常国会に関連法案を提出するよう関係閣僚に指示した。

 コロナ禍では各種の給付金支給や感染者数の集計に手作業が多く残され、混乱を招いた。行政のデジタル化が民間に比べ大きく遅れていることが、改めて浮き彫りになった。

 ただ、デジタル化はあくまで手段に過ぎない。重要なのはその目的だ。

 役所に行かなくてもスマホで各種の手続きができる-といったレベルにとどめず、社会情勢の変化に応じて国民生活を大きく向上させることを、理念として明示してもらいたい。

 デジタル庁が目指すのは、行政事務のデジタル化にとどまらない。経済産業省や総務省、文部科学省などに分かれているデジタル政策を一元化し、司令塔とする狙いがある。

 各省庁にすれば既得権益を奪われることにもなる。これを突破口に霞が関全体の改革につなげるのが首相の思惑だろう。

 重要なのは既存の政策の寄せ集めではなく、民間の発想や知恵を生かすことだ。

 特別定額給付金の支給やウイルス感染者の集計には、市販のアプリが導入されて効率化が進んだ。台湾では民間出身のIT担当大臣がマスクの在庫確認や予約購入ができるアプリを導入し混乱を回避した。

 デジタル化で施策の実行がスピードアップされる分、立案段階でも国民のニーズに迅速に対応できるよう各省庁の体質を刷新する必要がある。

 注視しなければならないのはデジタル化が持つ負の側面だ。

 政府はマイナンバーカードを国民に普及させるため、健康保険証や運転免許証としても使えるよう検討中だが、実現すれば行政に膨大な個人情報が蓄積されることになる。

 情報の流出や悪用に歯止めをかけるだけでなく、情報管理についての明確なルール作りが欠かせない。運用の透明性を高め、第三者がチェックできる仕組みを設けるべきだ。

 政府が掲げる利便性だけでなく、デジタル化は容易に国民の統制強化の手段になりうることも留意しておきたい。

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