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 東京電力福島第1原発事故について、国の責任を明確に指摘する高裁判断が示された。

 原発事故当時に居住していた福島県と、隣接する宮城、茨城、栃木3県で被災した約3650人が国と東電に損害賠償などを求めた訴訟の控訴審判決で、仙台高裁が国と東電に対し、原告3550人に計約10億1千万円を支払うよう命じた。

 全国で係争中の集団訴訟約30件のうち、高裁が国の責任について判決を出したのは初めてだ。地裁判決では7件が国の責任を認め、6件では認めず、判断が分かれている。一審の福島地裁に続き、二審でも国の責任を認める判決が言い渡された事実は重い。

 救済範囲と賠償額も、約2900人、計約5億円だった地裁判決より広がった。自主避難者を含む被災者の実情に近づいた内容と言える。国と東電は判決を正面から受け止めなければならない。

 一連の訴訟の中で福島は原告が最も多く、シンボル的な訴訟である。全国の原告は1万人を超え、神戸地裁でも集団訴訟が審理されている。今回の判決内容は今後の訴訟の流れにも影響を与えるだろう。

 仙台高裁での審理は、一審と同じく、原発を襲う大津波を予見できたか、対策工事で事故を防げたか、国の中間指針に基づく賠償額で十分か-が主要な争点となった。

 国は「津波は予見できず、事故を防ぐことも不可能だった」と主張した。東電も「国の指針に基づき賠償額を支払っている」と述べたが、判決はいずれも退けた。

 高裁が重視したのは、2002年に政府機関が出した長期評価だ。これに基づいて試算していれば、国と東電は敷地を越える巨大な津波を予見でき、国が東電に対策を命じていれば事故は防げたと指摘した。

 さらに、国の賠償責任は東電の2分の1にとどまるとした一審に対し、高裁は東電と同等に責任を負うべきだと結論付けた。国が東電を規制する権限を行使しなかったのは「違法」と指弾し、その責任をより重く認定した。多くの国民の受け止めに沿った判断と言える。

 一方で、放射線量を事故前の水準に戻す原状回復の訴えは、一審に続いて却下した。郷里を放射能で汚染され、穏やかな暮らしを奪われた苦しみは賠償で埋め合わせができるものではなく、違和感が残る。

 加藤勝信官房長官は判決を受け「関係省庁で判決内容を精査の上、適切に対応していく」と述べた。

 原発事故から10年近くなり、被災者は高齢化が進む。国と東電は判決を受け入れて、原告はもちろん、全ての被災者の救済を急ぐべきだ。

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