社説

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 菅義偉首相が所信表明演説で、二酸化炭素(CO2)など温室効果ガス排出量を2050年までに実質ゼロにすると宣言した。

 異常気象や自然災害の多発につながる地球温暖化は、人類が直面する深刻な問題である。首相が脱炭素社会の実現を明確に掲げたことは、前向きに受け止めたい。

 ただ、世界は先に進んでいる。産業革命以前からの気温上昇を1・5度以内にすることを目指すパリ協定の下、欧州連合(EU)をはじめ約120の国が「50年実質ゼロ」を表明している。中国も先月「60年に実質ゼロ」を宣言して話題となった。

 日本政府はこれまで、実質ゼロを「今世紀後半の早期に実現できるよう努力」という曖昧な表現にとどめ国際社会から批判を浴びていた。

 ようやく国際レベルの認識に追いついたかたちだが、出遅れた分、実現へのハードルは高い。社会と経済のあり方を大胆に変革する覚悟を持って、政策を総動員して具体的な取り組みを早期に始める必要がある。

 目標達成には、再生可能エネルギーの大幅拡大と火力発電の縮減、原発の位置づけが課題となる。

 首相の宣言を受け、経済産業省は水素エネルギーやCO2を燃料に再利用するカーボンリサイクルなどの技術開発を進め、洋上風力発電の産業育成にも力を入れる方針を示した。年内にも実行計画をまとめる。

 だが未知数の技術革新だけに頼るわけにはいかない。鍵を握るのは、CO2を大量に排出する石炭火力発電への対応である。菅首相は所信表明で「石炭火力に対する政策を抜本的に転換する」と述べた。

 経産省は7月、非効率な石炭火力発電を30年度までに段階的に休廃止する半面、高効率の石炭火力は使い続けるとしている。脱炭素社会を目指す以上、日本も石炭火力発電の全廃に踏み出すべきだ。

 懸念されるのは、政府が原子力政策を進める姿勢を崩していないことだ。火力よりCO2の排出量は少ないものの、東京電力福島第1原発事故で失墜した信頼の回復は困難だ。安全対策費がかさみ、コスト面の優位性も揺らぐ。実質ゼロ宣言を原発推進の免罪符にしてはならない。

 当面は現在の中期目標「30年度に13年度比26%削減」の見直しが急務だ。脱炭素化への投資や産業構造転換の好機ととらえる経済界とも連携し、再エネ普及と脱原発を可能にする道筋を示さねばならない。

 地方の取り組みも重要だ。国に先行して実質ゼロを宣言した自治体は明石市など全国で150を超える。首相が言及した「国と自治体による新たな会議体」を、規制緩和や財政支援策に生かしてもらいたい。

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