社説

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 菅義偉首相の所信に対する代表質問が衆参両院で始まった。菅内閣発足後初の本格的な国会論戦である。

 だが首相は、野党の問題提起に対し、従来の答弁を「棒読み」で繰り返すなど丁寧な説明を避けようとする姿勢が目についた。これでは議論は深まりようがない。

 「国民のために働く内閣」を自任するなら、首相は疑問に正面から答え、目指す社会や国家観を明確に示して理解を得るのが先決である。

 日本学術会議が推薦した会員候補6人の任命を拒否した問題では、特にかたくなさがあらわになった。

 野党側が任命拒否の違法性を指摘し撤回を求めたのに対し、「推薦通り任命する必要はないというのが、内閣法制局の了解を得た政府の一貫した考えだ」との見解を示した。

 しかし、首相の任命権は「形式的」で、推薦候補の拒否は想定していないとした過去の政府答弁との整合性がとれない。国会審議を経ず法解釈を変えていたことになるが、それも認めようとしなかった。

 一方で首相は、学術会議の構成は会員の出身大学などに偏りがあり、民間人や若手、女性が少ないとして「多様性を考慮した」と強調した。

 これには学術会議の元会長が具体的なデータを示して反論している。6人の中に女性や、会員がいない大学の研究者がいたこととも矛盾しており、説得力に欠ける。

 誰が、なぜ6人の拒否を決めたのか。曖昧な説明に終始する限り、政権の意に沿わない学者を恣意(しい)的に排除したとの疑念はぬぐえない。

 首相は指摘を謙虚に受け止め、任命拒否を撤回すべきだ。

 首相が掲げる「自助、共助、公助」の社会像もテーマになった。

 立憲民主党の枝野幸男代表は、人口減少や高齢化などの進展に伴い、自助努力だけでは生きていけず、共助も難しい地域や社会から孤立する人が増えているとし、自助ありきの発想は「時代遅れ」と批判した。

 これに代わる選択肢として、安心できる社会保障を基盤とした「共生社会」をつくるとも訴えた。合流を果たし、野党第1党として政権交代に挑む決意の表明と言える。

 これに対しても菅首相は、所信表明の文言をなぞるだけだった。目指す社会像を巡る論戦に消極的とも映る姿に、一国のリーダーとして物足りなさを抱かざるを得ない。

 エネルギー政策の大転換を迫る温室効果ガスの「2050年ゼロ宣言」や、新型コロナウイルス克服と経済再生など、今国会は新たな社会の姿を示す重要課題が山積する。

 1年以内に衆院選がある。与野党は政策を競い、国民の判断材料となる論戦を心がけてもらいたい。

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