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 国産初の民間ジェット旅客機の夢は、ついえてしまうのか。

 三菱重工業がスペースジェット事業の凍結を決めた。2008年の事業化から総額1兆円の開発費を投じ、試験飛行にこぎつけたが、運航に必要な「型式証明」の取得が見込めない上、コロナ禍による航空会社からの受注キャンセルが響いた。

 航空機には100万点もの部品が使われ、求められる安全水準の高さは自動車をはるかに上回る。仮に凍結から撤退に踏み切る結果になれば、これまでの技術集積が生かされなくなる。

 政府はスペースジェットの開発費に500億円を補助するなど、国策と位置付けて支援してきた。凍結に至った要因を官民で徹底検証し、善後策を講じねばならない。

 三菱重工は長年にわたって自衛隊の戦闘機を製造し、航空関連の技術陣も数多く在籍する。スペースジェットの開発は、世界的な航空輸送の需要増に対応し強みを生かす狙いだった。

 しかし型式証明には戦闘機のノウハウが役立たず、13年の予定だった納期は6度も延期された。立て直しのため外国人技術者を招いたが、社員との対立が生まれ事業にも響いた。

 国費が投じられているため凍結の意思決定も後手に回り、開発する子会社の赤字は5269億円に膨れ上がった。

 豊富な資金や有能な人材を擁しながら、経営手腕のまずさや国とのしがらみから革新的な成果を見いだせない。今回の凍結の背後にはそうした「大企業病」もうかがえる。三菱重工が足元の組織風土を省みるにとどまらず、多くの日本企業が他山の石とするべきだろう。

 関西の航空機産業の製品出荷額は10年で約3倍に増え、兵庫の生産額は東京、愛知、福島に次ぐ。その蓄積が評価され、先月末には神戸で航空エンジンの国際商談会が開かれた。

 航空機需要は今でこそ世界的に大きく落ちこんでいる。しかしスペースジェットのような中小型機は、長期的には展望が開けるとも指摘される。

 日本経済を支えた自動車や家電が往時の輝きを失う中、ものづくりの蓄積を生かして航空機を次代の要とする戦略を、官民で練り上げる必要がある。

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