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歓喜するバイデン氏の支持者たち
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歓喜するバイデン氏の支持者たち

歓喜するバイデン氏の支持者たち

歓喜するバイデン氏の支持者たち

 米国が国民の分断や独善的な自国第一主義からの脱却へ、確かな一歩を踏み出すことを期待する。

 記録的な高投票率となった大統領選は事実上、民主党候補のバイデン氏が制した。当選が確定すれば来年1月20日、トランプ氏に代わり第46代大統領に就任する。

 世界最悪のコロナ感染や人種問題で米社会の亀裂は危険なレベルにまで深まった。77歳の新リーダーは「デバイド(分断)ではなく、ユナイト(結束)が必要だ」と訴えてきた。困難が予想されるが、その言葉を実行に移すときである。

 民主主義の超大国として、国際社会への復帰も望まれる。世界にとっても、歴史的な分岐点となるに違いない。

       ◇

 時計の針を戻してみよう。

 前回2016年の大統領選で勝利したトランプ氏は語った。「私は全国民の大統領になり、分断の傷を癒やす」。米国内で、そして日本でもこんな声が上がった。「就任すればさすがに態度を改めるだろう」

 だが、結果は見ての通りである。

 トランプ大統領は一貫して自分の信奉者のための政治を行ってきたといえる。品位に欠ける言動があっても岩盤支持層は揺らぐどころか喝采した。製造業の衰退で苦境にあえぐ白人労働者や、オバマ前政権が進めたリベラル色の強い政策に反発する保守派の人たちとされる。

深い傷を負った社会

 「トランプか否か」が争われた今回の選挙は、米国の現状を映し出す激しい攻防となった。次期大統領が向き合うのは、分断が極まり、とどまらないコロナ禍で疲弊しきった米社会である。

 政治的な意見の対立は家族間にも及んでいる。コロナの死者は23万人を超えた。混乱の傷はあまりに深く、癒やすには時間がかかるだろう。

 国民融和とコロナ対策が当面の最重要課題になる。政策が極端にリベラル寄りに振れれば、反発を招いて対立は泥沼化しかねない。バイデン氏には、真の「全国民の大統領」になる努力が求められる。

 黒人、アジア系、女性として初の副大統領になるハリス氏は、米国の多様性を象徴する存在である。マイノリティーとして培った経験は説得力を持つはずだ。国内の対話促進に手腕を発揮してもらいたい。

国際社会の担い手へ

 米国の対外的な威信は、この4年で大きく損なわれた。

 「あなた方も自国第一にすればいい」。今年の国連総会でトランプ氏が言い放ち、各国の失笑を買ったのは記憶に新しい。

 地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」から離脱し、世界保健機関(WHO)からの脱退も通告した。多国間交渉に背を向け、一対一の「ディール(取引)外交」に走る米国に、国際秩序を支えてきたかつての面影を見いだすのは難しい。

 バイデン氏は公約で国際協調への回帰を約束した。望ましい方向だ。地球規模の気候変動や疫病、紛争などに対処するには多国間連携が欠かせない。米国は国際社会の担い手として指導力を取り戻す必要がある。

 一方、覇権を強める中国に対して新大統領も強い姿勢に出ると予想される。「米国の世論がもはや親中を許さない。その結果、中国とロシアが接近すれば、世界を線引きする力が強まる」と外交・安全保障が専門の神戸大大学院教授、簑原俊洋氏はみる。

 日本は米国の同盟国だが、中国との経済的な結びつきも強い。米中のはざまで立ち位置が問われる可能性がある。菅政権は日米関係を基軸としつつ、国益を最大にする外交戦略を練り上げねばならない。

 投票妨害などが相次いだ今回の大統領選は、民主主義のもろさを世界に見せつけた。守るべき選挙制度を、自身の負けを認めたくないばかりに現職大統領が攻撃する。揺らぐのは公的な制度やルールへの信頼だ。

 社会の分断は、民主主義を弱体化させる。日本にとっても人ごとではない。肝に銘じるべきである。

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