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 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を巡り、沖縄県の埋め立て承認撤回を国土交通相が取り消す裁決をしたのは違法として、県が裁決取り消しを求めた訴訟の判決で、那覇地裁は訴えを却下した。

 県に原告としての資格を認めない、門前払いの判決である。玉城デニー知事は「埋め立て承認取り消し処分の適法性などに関する審理が全くなされないまま示された判決は、納得できない」とコメントした。

 裁判はわずか2回の口頭弁論で早々に結審した。国の裁決の妥当性について、司法が審理を放棄したことになり、残念でならない。

 沖縄県は2018年8月、埋め立て予定海域に軟弱な地盤が見つかったことなどを理由に、埋め立て承認を撤回した。それに対して国交相は翌年4月、撤回を取り消す裁決をした。県の意向に反し、政府は移設工事を進めている。

 この訴訟で県側は、承認撤回の適法性に加え、軟弱地盤の存在や環境保全措置の不備など、埋め立て工事の問題点を具体的に示した。

 那覇地裁は、県の訴えは裁判の対象にならないと指摘した。その根拠にしたのは、宝塚市が条例に基づいてパチンコ店建築の中止を求めた上告審の判例だった。02年の判決では、行政的な争いで国や自治体が条例、規則に従うよう求める訴訟は起こせないと最高裁が判示した。

 だが今回のような裁判ができなければ、国は自由に自治体の判断を覆せることになる。玉城知事は敗訴を受け「辺野古埋め立て工事だけの問題ではなく、全ての地方自治体にとって、(自主性・自立性を脅かす事態が)現実に起こりうる」と述べた。その危機感は理解できる。

 県は今年3月、国交相の裁決取り消しを求めた別の訴訟でも最高裁で敗訴した。県と国は、埋め立て予定海域のサンゴ類移植を巡っても福岡高裁那覇支部で係争中で、来年2月に判決が言い渡される。

 だが県と国が訴訟を重ねても、普天間飛行場返還などの基地問題解決に道が開けるとは考えにくい。

 判決後、加藤勝信官房長官は「辺野古移設が唯一の解決策」と改めて述べた。政府は今年4月、軟弱地盤の改良工事のための設計変更を県に申請しているが、県側は申請を認めないとみられる。

 政府と県との対立をこれ以上激化させてはならない。県は対話による解決の必要性を繰り返し訴えてきたのに、国は拒み続けている。国の裁決の中身について法廷で議論されなかった以上、政府は県との対話に努力すべきだ。

 菅義偉首相自らが玉城知事と胸襟を開いて話し合ってもらいたい。

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