社説

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 政府が観光支援事業「Go To トラベル」について全国での一時停止を決めた。新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない状況を踏まえ、大阪市など一部地域の利用制限から方針転換した。

 菅義偉首相は先週末まで、経済への悪影響を理由に全国的な停止には否定的だった。週が明けるや方針を転換させた形だが、その判断はあまりに遅すぎる。

 専門家の分科会は再三にわたって感染急増地域でのトラベル事業停止を求めてきたが、対策は小手先にとどまった。政府は「勝負の3週間」を掲げたものの、国民の行動変容に結びつく明確な政策を打ち出さず、都市部の人出は緊急事態宣言のときほど減っていない。状況は悪化の一途をたどっている。

 人の移動を極力制限するのが感染症対策の要であり、税金で旅行や宿泊を促すタイミングでないことは自明だ。専門家の提言を顧みず、ここまで事態を深刻化させた首相の責任は大きい。自らの判断の失敗を認めた上で経済重視をいったん封印し、感染抑制に向けた行動変容の必要性を自ら国民に説くべきである。

 首相の方針転換の背景には、内閣支持率の低下が指摘されている。

 共同通信が12月上旬に実施した調査では前回から12・7ポイントも急落し、他の調査では不支持が支持を逆転したものもある。最大の要因は、政府の感染対策の不十分さだ。

 首相は「トラベル事業は感染拡大の原因でない」という主張を現在も撤回しておらず、今回の決定との整合性がない。一時停止を始めるのが今月28日と2週間近く先なのも理解に苦しむ。停止はするが経済損失はできるだけ少なくしたいといった及び腰では、感染防止に向けた強力なリーダーシップを振るうことは到底不可能だろう。

 違和感を覚えるのは、トラベル事業を続けないと経済的に追い込まれ自殺者が増えるという主張が与党内にあることだ。

 自殺者数が昨年を上回り始めたのはGo Toトラベル事業が始まった7月以降だ。東京除外が解除された10月は前年比で約4割増えた。データを見る限り、自殺者数を抑制したとは言い難い。それよりも、生活苦や病苦などを抱え孤立する人々に手を差し伸べる政策にこそ、力を尽くすべきではなかったか。

 留意すべきは、トラベル事業停止はあくまで対策の一つにすぎない点だ。政府は都道府県知事と連携した上で、地域限定の休業要請などさらに強力な施策も視野に入れる必要がある。安心して要請に応じるための支援体制をセットで打ち出すのはその大前提になる。

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