社説

  • 印刷

 政府がきのう閣議決定した2021年度当初予算案は、一般会計の総額が106兆6097億円となった。9年連続で過去最大を更新し、全体の4割強を国債(借金)で賄う。

 新型コロナウイルスの感染拡大は予断を許さない。経済が冷え込む中で国民生活を守るには思い切った財政出動が必要だ。今は巨額の国債発行も許容せざるを得ない。

 ただ、あくまでコロナ禍という非常事態を乗り切るための手段だ。いずれ収束した後、借金の山を減らさないと、ツケは次代に回る。

 懸念するのは非常時の対応が常態となり、財政規律が形骸化することだ。血税の使い道は例年にも増して、厳しく吟味する必要がある。

       ◇

 菅政権初の予算編成である。デジタル庁設置や脱炭素、不妊治療支援など菅義偉首相肝いりの政策も盛り込まれたが、規模拡大の最大の要因は、予備費の5兆円だ。

 国会の議決を経ず、政府の裁量で使える。感染拡大の先行きが見通せない中で臨機応変に政策を実行するには、一定の規模は必要だろう。

巨費を死蔵させるな

 ただ20年度の予算執行を見れば、積み上げた金額に見合う効果が上がっているかは疑問だ。

 医療が逼迫(ひっぱく)する地域が続出し、病床も医療人材も足りない。感染経路を追う保健所の態勢も限界に達している。営業自粛に応じた店舗に自治体が独自に支払う協力金も、十分な額ではない。

 本年度、コロナ対応に使うとした予備費は補正予算を含めると計11・5兆円に上るが、政府はまだ5兆円を使い残している。これでは、巨額の国費が死蔵されているに等しい。現場の苦境を的確に把握し、きちんと活用できていれば、こうした事態は生じなかったのではないか。

 安倍晋三前首相は、政府の目標通りにPCR検査の件数が増えない状況を「目詰まり」と表現した。政権の強みと自負してきた官邸主導は、国民の命と暮らしを守る重大局面で十分に機能しなかったと言える。

 現場の実態を政府が掌握していないことによる「目詰まり」は、ほかでも起きている可能性がある。安倍政権継承を掲げた菅政権は、必要な予算が必要な場所に届いているかをまずチェックする必要がある。

 予備費を除けば、歳出額はほぼ前年並みだ。社会保障費や防衛費は過去最大を更新したが、公共事業費を20年度当初を11・5%下回る6兆円とし、全体を抑えこんでいる。

 だが、政府が財政支出の抑制を意識した結果とは言い難い。21年度当初予算と一体で編成された20年度第3次補正に、コロナ対応の追加経済対策の多くと、国土強靱(きょうじん)化と銘打った1・6兆円の公共事業費を紛れ込ませているからにすぎない。

 編成期間が短い補正予算は、査定が甘くなる。コロナ禍の収束後も景気対策などの名目でこの手法がまかり通れば、費用対効果を十分煮詰めない事業が山積する恐れがある。

財政再建の意思示せ

 コロナ禍でも、国政の重要課題の先送りや棚上げは許されない。

 膨らむ社会保障費の抑制策として今回、高齢者医療費の窓口負担増や薬価引き下げに踏み切る。しかし団塊の世代が後期高齢者となる25年度を見据えれば、予算編成のたびにその場しのぎの対応を繰り返すのでなく、制度全体を持続させる抜本的な見直しに着手する必要がある。

 9年連続増となる防衛費では、相手の射程圏外から攻撃できる「スタンド・オフ・ミサイル」の開発経費を335億円計上した。専守防衛の逸脱につながる恐れがあり、国会が厳しくたださねばならない。

 一方、歳入ではコロナ禍による企業業績の低迷で税収を20年度当初比9・5%減と見込む。財源不足の穴埋めに43兆5970億円の新規国債を発行する。国と地方の長期債務残高は1209兆円に達し、国内総生産(GDP)の2倍を優に超す。

 政府は25年度までに、基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字にする財政再建目標を掲げるが、21年度予算案は20兆円超の赤字となる。税収を増やし、支出を減らして目標を達成するのは至難の業だ。

 第2次安倍政権下の約8年で消費税率は2度引き上げられたが、予算規模も膨らみ、国債発行額は増え続けた。財政健全化への意思は希薄だったというほかない。

 コロナ禍は、国民生活や企業活動を大きく変えようとしている。次代へのツケを減らし、新たな社会構造を見据えた財政再建の道筋を、菅政権は描きださなければならない。

社説の最新
もっと見る

天気(4月16日)

  • 19℃
  • 14℃
  • 60%

  • 21℃
  • 7℃
  • 50%

  • 20℃
  • 13℃
  • 40%

  • 19℃
  • 12℃
  • 50%

お知らせ