社説

  • 印刷

 臨時国会閉幕を見計らったように政府がミサイル防衛に関する文書を決定した。論戦を先送りして批判をかわす狙いがあるのだろう。

 断念した地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の代替策として、海上自衛隊のイージス艦2隻を新造する。それにとどまらず、国産ミサイルの飛距離を飛躍的に延ばすなど、自衛隊のミサイル能力の増強方針を盛り込んでいる。

 とりわけ懸念されるのが、敵の射程圏外から目標を攻撃できる「スタンド・オフ・ミサイル」の独自開発を打ち出したことだ。

 政府は外敵に対処する自衛官の安全確保を理由に挙げるが、他国にまで届くミサイルの配備には「専守防衛」を逸脱する懸念がつきまとう。なし崩しの導入は許されない。

 他国の領域内のミサイル拠点などを破壊する「敵基地攻撃能力」の保有は、今回は明記を見送った。安倍晋三前首相が退任間際に異例の談話を発表し、年末までに方針を決めるよう促したが、菅義偉首相が前向きでなく、連立与党の公明党も慎重姿勢を示しているためとされる。

 イージス・アショアに代わる防衛策の検討が、途中から敵基地攻撃能力の保有論議にすり替わった。自民党内にも「論理の飛躍」を危ぶむ声があり、政府の対応は当然だ。

 そもそも他国の施設を破壊する行為は国際法が禁じる先制攻撃との区別がつきにくい。そのため歴代政権は慎重な構えを維持してきた。菅政権も改めて肝に銘じるべきである。

 一方、スタンド・オフ・ミサイルの独自開発を目指す動きは前政権同様、前のめりというしかない。

 陸上自衛隊に配備した国産ミサイルの射程を百数十キロから約900キロに延ばし、新しいイージス艦や戦闘機への搭載も検討する。中国の海洋進出を念頭に南西諸島防衛を強化する狙いとするが、運用次第で対象やエリアを拡大することは可能だ。

 近年、防衛省は射程約900キロの長射程米国製ミサイルの導入を計画しスタンド・オフ能力の向上を進めてきた。国産ミサイル開発が加われば破壊力は一気に高まるだろう。

 ただでさえ、護衛艦の空母化など攻撃型の装備強化が目立つ。新型コロナ対策で国の財政が余力を失いつつある中、米トランプ政権の要請を受けた巨額の装備品「爆買い」もあって防衛費は膨らむ一方だ。

 他国との際限ない軍拡競争に陥る危険性も指摘されている。「平和国家」にふさわしい防衛力と外交政策を再考しなければならない。

【訂正】23日付社説「安倍前首相聴取」で「19年から5年間」は誤りで「19年までの5年間」でした。

社説の最新
もっと見る

天気(3月9日)

  • 15℃
  • ---℃
  • 10%

  • 15℃
  • ---℃
  • 0%

  • 15℃
  • ---℃
  • 10%

  • 16℃
  • ---℃
  • 10%

お知らせ