社説

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 覚醒剤の使用歴がある受刑者への調査で、女性の73%が「交際相手や配偶者らからドメスティックバイオレンス(DV)被害を受けたことがある」と答えたことが、2020年版の犯罪白書で明らかになった。

 「刃物などで自分の身体を切ったこと(リストカットなど)がある」との回答も、男性の8%に対して女性は41%と非常に高かった。

 覚醒剤使用の精神的要因を探る受刑者調査は初めてだ。白書では男女別の特徴も詳しく記されている。女性の乱用者の背景にある厳しい社会環境をさらに分析し、薬物犯罪の防止に反映させなければならない。

 この調査は、法務省法務総合研究所と厚生労働省所管の国立精神・神経医療研究センターが、17年に共同研究として実施した。

 覚醒剤の入手先について「交際相手や配偶者」と答えた女性は21%だったのに対し、男性は1%にとどまった。身近な人物によって犯罪に引き込まれた例も多いとみられ、どう防ぐかという課題が見える。

 また、女性の47%が20歳未満から覚醒剤を乱用していた。男性よりも割合が高く、深刻な問題だ。

 一方で84%の女性、69%の男性が覚醒剤をやめる具体的な努力をした経験があり、薬物から逃れる道を模索していることがうかがえる。

 だが実際に専門病院や保健機関、回復支援施設、自助グループの支援を受けた経験は少なく、専門病院の関与も2割台にすぎない。ただし4割は、家族などの理解・協力があれば専門病院の支援を受けると答えている。再犯防止には周囲の支えや適切な情報提供も欠かせない。

 札幌刑務支所では19年度から「女子依存症回復支援モデル事業」が試行されている。自主的な共同生活が営まれ、出所後も継続して回復へのプログラムを受けられる。こうした新たな取り組みに期待したい。

 性別を問わず懸念されるのは、再犯者の多さだ。覚醒剤取締法違反罪で摘発された再犯者率は2000年の52%から昨年の67%に上昇している。薬物依存の重症度も再犯の方が深刻化する傾向が見られる。

 一方で、薬物密売は暴力団の資金源であり続けている。暴力団対策や乱用者への支援体制の強化なども含めて、多角的な薬物犯罪防止策を進めていく必要がある。

 白書は、インターネットで薬物乱用が心身に与える影響を矮小(わいしょう)化する言説が流布していると指摘する。とりわけ若者らの中に「大麻は害がない」などの誤解を生んでいる。

 脳をはじめとする心身への悪影響や依存症、人間関係の崩壊など薬物の恐ろしさを、あらためて社会全体で共有したい。

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