社説

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 新型コロナウイルスの影響を抜きには語れないこの1年だが、それとは切り離して問い直さねばならない問題もある。

 今、社会を覆っている不安は未知のウイルスによる一過性の事態なのか、この国がずっと抱えていた問題なのか。混迷から抜け出すために、その本質を見極める必要があるからだ。

 7年8カ月に及んだ歴代最長政権が安倍晋三首相の体調不良を理由とした突然の退陣で幕を閉じた。国政選挙の連勝で「1強」体制を築いた安倍氏は安全保障関連法など賛否が分かれる法律を成立させた一方、「地方創生」「女性活躍」といった看板政策は道半ばに終わった。

 継承を掲げた菅義偉首相が「あしき前例」として真っ先に手を付けたのは、コロナ禍での優先課題とは考えにくい日本学術会議会員の任命拒否だった。

 踏襲されたのは国会で積み上げてきた法解釈を曲げ、問答無用で意に沿う組織に変えようとする強権的な政治手法である。

 異論に耳を傾けず、説明責任を果たさない政治の長期化が、官邸への忖度(そんたく)をはびこらせ、国民との距離を広げた。酷評された「アベノマスク」、迷走を重ねた「Go To」事業など両政権のコロナ対応の混乱も、その延長線上にあったと言える。

 政権中枢で相次ぐ「政治とカネ」問題が不信を一層深めた。「桜を見る会」前夜祭の費用補填(ほてん)問題で安倍氏は虚偽の国会答弁を認めた。元法相夫妻の公選法違反事件、元副大臣のIR汚職事件、元農相の現金授受疑惑のいずれも十分な説明はない。

 緊急事態宣言や東京五輪・パラリンピックの延期決定などは国や自治体の判断が人の人生をも左右することを実感させた。

 導入を望む人が増えている選択的夫婦別姓制度は自民党の反対で再び後退した。国民の声や社会の変化に真摯(しんし)に向き合う議論が尽くされたかは疑問だ。

 熊本県などを襲った豪雨被害は複合災害への備えに警鐘を鳴らした。会員制交流サイト(SNS)の普及は、人を追い詰める中傷や、悩みに付け込む凶悪犯罪の温床にもなった。

 異なる価値観を認め、弱さを補い合ってこそ、手ごわい災禍を乗り越えられる。変わろうとしない政治を前に、心に刻む。

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