社説

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 日本の少子化が止まらない。新型コロナの影響で、2021年の出生数は大幅に減りそうだ。

 保育所が足りない、仕事と育児の両立が難しい、不妊治療の費用負担が重い-。どれも政策が問われる。

 だがここでは、見過ごされてきた課題を取り上げたい。

 「未婚化」である。

 実は、若い世代の結婚願望は強い。国の調査では18~34歳の男女の約9割が「いずれ結婚するつもり」と答え、この割合は1980年代以降ほぼ一定している。にもかかわらず、50歳時点の未婚割合は2000年代から急上昇しているのだ。

 結婚へのハードルが、高くなったのか。ある2人の話から始めよう。

    ◇    ◇

 兵庫県上郡町出身の元保育士、柳生亜矢子さん(35)は、婚活の日々を「自分が否定されているようで苦しい時もあった」と振り返る。

 出会いが少ないのが悩みだった。2010年、実家近くに県が開設した「出会いサポートセンター」に会員登録し、お見合いを重ねた。

 和菓子職人の俊彦さん(40)と会ったのは6年後。率直さに引かれ、10カ月の交際を経て32歳で結婚した。たつの市に1歳の息子と3人で暮らす。「出会いがなく結婚を諦めかけている女友達は結構いる。自分は周囲に相談したけど、ためらう気持ちも分かる」と話す。

自治体が婚活を支援

 少子化や人口流出への危機感から、多くの自治体が男女の交流会やお見合いなどの婚活支援を手がけている。兵庫県の事業を通してこれまでに1786組が結婚した。

 以前は「官製の婚活なんて」と冷ややかな声があったが、今や空気は一変した。未婚化は少子化に直結するとの実感が広がってきたためだ。

 結婚する、しないはもちろん個人の選択である。

 ただ、急速な未婚化はもはや社会的な課題となった。「個人の問題」と軽視せずに社会全体で現状に向き合うことが求められる。

 未婚化は男性の方が顕著だ。

 50歳までに結婚歴のない人の割合は、1985年まで男女とも5%未満だったが、2015年に男性23%、女性14%といずれも過去最高となった。国の推計では35年に男性が約30%に達する。男性のほぼ3人に1人が独身のままの社会になる。

 「男性は婚活を始めるのが全般的に遅い。年齢が上がるほど『子どもが欲しい』と相手に若さを求めがち」。官民を問わず結婚支援に関わる人たちはミスマッチの主因をこう語る。早期支援が鍵になりそうだ。

 かつて地域でみられた「親身なお節介」を復活させる動きもある。

自立と幸せを考える

 西脇市の藤原一志(ひとし)さん(77)は県内に361人いる「こうのとり大使」の一人。知事の委嘱で婚活イベントを企画するほか、近隣の大使と情報交換し、ボランティアで縁結びに奔走する。「放っておけば男性の結婚は難しくなるばかり。交際経験の少ない人も多く、きめ細かなアドバイスを心がけている」という。

 自治体の少子化対策や人口施策のアドバイザーを務めるニッセイ基礎研究所(東京)の天野馨南子(かなこ)さんの指摘にも耳を傾けたい。

 国の調査では、未婚者の多くが金銭的な理由を結婚の障害に挙げる。しかしデータを分析すると、未婚者は既婚者より結婚生活に必要な年収を過大にとらえがちという。

 「男性は両親と比べたりせず、自分の収入にもっと自信を。年収にこだわる人は、家計を男性だけが背負わず、男女が協力して担う生き方を視野に入れてほしい」

 未婚化を考えることは、次世代の自立と幸せに思いを巡らすことにほかならない。地域社会に若者が希望を持てるかも問い直す必要がある。

 新型コロナの感染拡大で結婚を考える人が増えたといわれる。「パートナーが欲しくなった」との声は兵庫県にも寄せられている。深刻な状況だからこそ、未来への光明につなげる努力が重要になる。悠長に構えている余裕はもうないはずだ。

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