社説

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 新型コロナウイルスの感染拡大は不安定な立場にある若い世代を直撃した。非正規雇用は真っ先に切られ、多くの学生がアルバイト収入を失って困窮する。このままでは次代の担い手に「新たな貧困層」が生まれるとの指摘もある。だが、国などの支援の動きは鈍い。

 コロナ禍を抜けても、格差と分断、財政、気候変動などの難題が社会の変革を迫る。険しい道を照らすのは若い世代のやわらかい感性だ。

 今年は衆院選、兵庫県知事選、神戸市長選などで国や地域の将来像が問われる。若者とともに未来を描くための視座を探りたい。

    ◇

 学費の高騰や学生ローンの返済に苦しむ20代前後の不遇は海外でも問題となり、英米ではこの世代が政権に批判的な勢力と位置づけられる。

 翻って日本は、若年層ほど政府の主張を受け入れる傾向にある。第2次安倍政権以降の世論調査では30代以下の内閣支持率が他世代に比べて高く、コロナ禍の政府対応を評価する割合も多い。政治家の疑惑や不祥事の追及を求める声は少ない。

 また、内閣府の意識調査(2013年)では「自分が参加することで社会を変えられる」と思う若者は欧米や韓国と比べて少なかった。

 浮かび上がるのは、政治にも自分にも期待せず、現状にあらがうことのない若者の姿である。

力を信じて生かす

 だが取材で出会ったのは、政治をもっと知り、主体的に関わっていこうと行動する若者たちだった。

 ともに神戸市外国語大3年の米田由実さん(22)と吉井紗香さん(21)、神戸大大学院生の永本聡さん(24)らは、昨年10月の三田市議選で「10代の投票率80%」を掲げどうすれば投票率が上がるか考えた。

 写真・動画共有アプリ「インスタグラム」で、市の現状や争点などを繰り返し投稿した。「投票率が低いと若者向けの政策が通りにくくなる」。自分たちが投票する意味や選挙の仕組みを解説したパンフレットも刷り、高校などで配った。

 3人は、10~20代の政治参加を呼びかける学生らの団体「ノー・ユース ノー・ジャパン(NYNJ)」のメンバーだ。3人とも昨年、海外留学の断念や途中帰国を経験した。空白の時間、日本でできることはないかとNYNJに参加し、身近な地方選挙での実践を試みた。

 同市議選の10代投票率は40・97%で4年前の前回選挙から8ポイント上昇した。全体の投票率(51・82%)が3ポイント増だったことを考えると、目標には及ばずとも彼らの活動が10代の投票行動を促した可能性は十分ある。

 一方、同市議選で初当選した元高校教師、井上昭吾さん(60)の選挙運動を担ったのは教え子の大学生たちだった。選挙カーは使わず、街頭演説はインスタグラムでライブ配信し、選対会議はLINEで。発案したのは学生たちだ。彼らもマイクを握り、同世代に向けて「新しい三田を一緒につくろう」と訴えた。

 井上さんは「若者の力を証明できた。既存の政治家がその力を信じ、本当に生かそうとしているかを省みるべきだ」と指摘する。

「将来人」の視点を

 コロナ禍で「自助」ではどうにもならない問題に直面し、初めて政治や社会を意識した若者は少なくないだろう。彼らが声を上げ、上の世代がその疑問や違和感に誠実に向き合うことから変革への対話が始まる。

 注目されるのが、何十年後かの将来世代になったつもりで政策を選び取る「フューチャー・デザイン」の手法だ。大阪府吹田市は大阪大などと共同研究を重ね、昨年策定した第3次環境基本計画に取り入れた。30年後の「仮想将来人」になりきった市民と職員が議論し、素案を変更して「再生可能エネルギーの活用」の記述などを盛り込んだ。

 未来からの視点を持つと、今からやっておくこと、我慢すべきことが見えてくるという。他自治体でも導入が始まっている。実践を重ね、世代を超えた課題を巡る意思決定の枠組みを育て、広げたい。

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