社説

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 きょうは「成人の日」だ。例年なら兵庫県内でも各地で成人式が開かれ、大人の仲間入りを祝福する。「晴れの日」を保護者ら周囲の大人も心待ちにしていたに違いない。

 しかし、新型コロナウイルスが猛威を振るい、政府が緊急事態宣言を再発令した状況下の今年は、いつもと様相が一変した。

 但馬や丹波、淡路などで多くの市町が式典延期を決めた。帰省する若者からの感染拡大を回避するためという。首都圏などの爆発的な感染が地方に影を落としている。

 県が緊急事態宣言の発令を要請したため、神戸市も延期に踏み切った。阪神、播磨地域ではきょうの開催が大半だが、時間や会場を分散するなどの対策を講じる。既に開催した市町も記念行事を取りやめるなど簡素な会場風景となった。

 「自分たちの年になぜこのような災厄が」とやるせなさを募らせる新成年は少なくないだろう。

 「巡り合わせが悪かった」と割り切れるものでもない。不条理さと無情なウイルスへの憤り…。

 その胸の内は痛いほど分かる。

 ただでさえ、コロナ禍で若年層への風当たりは強い。感染しても多くが無症状で、知らずにうつしてしまう可能性があるからだ。高齢者がかかれば重症化のリスクが高い。

 全てが若者のせいではない。だが外で元気に活動する半面、そうした懸念が指摘されるのも事実だ。

 ドイツのメルケル首相は昨年12月の演説で「祖父母と過ごす最後のクリスマスになってはならない」と若い人に懸命に呼び掛けた。

 人類全体がウイルスと向き合っていることを、共に肝に銘じたい。

 一方、若い世代はコロナ禍でしわ寄せも受けている。保護者の収入が減り、飲食店のアルバイトで学費などを捻出する大学生は、営業時間短縮でより困窮する恐れがある。

 事実、昨年の民間団体の調査では、4人に1人が「退学を考えたことがある」と答えていた。だが政府の学生に対する現金給付は対象が限られ、支援は十分とはいえない。

 大学生の就職内定率も、業績が悪化した企業が新卒採用数を絞ったことで、リーマン・ショック以来の落ち込みを見せる。若い世代は新型コロナの被害者でもある。

 政府や行政、企業のかじ取りを担うのは年長者だ。若い世代が将来に希望を持てるような努力を怠ってはいないか、きょうは大人たちに責任の自覚と猛省を促す日でもある。

 どんな困難に遭っても幸福になることをあきらめない。哲学者池田晶子さんのその言葉を誰もが実感できる世の中にしたい。それには若い人たちの力が、絶対に欠かせない。

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