社説

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 政権交代を間近に控えた米国が前代未聞の混乱に陥っている。

 トランプ大統領の支持者らが連邦議会議事堂を襲撃し、警察官を含む5人の死者が出た事件は、世界のリーダーを自認してきた超大国の権威を失墜させた。

 反乱を扇動したとして、トランプ氏の辞任を求める声が身内の共和党からも上がっている。側近が相次ぎ辞めた。民主党は刑事事件の起訴に相当する弾劾訴追の決議案を下院に提出した。

 米史上初めて大統領が2度目の弾劾訴追を受ける可能性が出てきた。ウクライナ疑惑を巡ってトランプ氏が弾劾裁判にかけられたのは、ほんの1年足らず前のことである。

 現職の大統領が選挙の結果を認めないばかりか、「弱さで国は取り戻せない」と議会への抗議をけしかけた。重大な結果を招いたトランプ氏の責任は極めて重い。もはや犯罪的ですらある。

 議事堂が不法占拠された「1・6(1月6日)」は間違いなく米国にとっての汚点となる。だが同時に、民主主義に対する警鐘とも受け取れないか。

 暴徒には白人男性が目立った。極右集団や「Qアノン」と呼ばれる陰謀論者の姿もあった。こうした人たちの多くは既成の政治家やメディアを敵視し、自分のために政治をしてくれていると映るトランプ氏を守ろうと考えたのだろう。

 エスタブリッシュメント(既得権益層)への反発が強まっているのは米国に限らない。既存の政党が民意を取りこぼし、経済格差が深刻化する状況が背景にある。

 手をこまねいていれば、人々の不満を刺激して対立をあおり、自らの求心力に利用しようとする政治家の出現を許してしまう。

 社会の分断が暴力となって民主主義そのものに向かったことを、日本をはじめ自由と人権を重んじる国々は深刻に受け止めねばならない。

 襲撃事件への批判を受け、トランプ氏は事実上の敗北宣言に追い込まれた。しかし、20日の就任式は欠席する意向を示した。

 バイデン次期大統領に正統性はないと受け取るトランプ支持者は少なくないだろう。さらなる暴力を誘発しかねず、危険である。トランプ氏と共和党は平和的な政権移行に責任を果たすべきだ。

 民主党はジョージア州の上院選決選投票で2議席を制し、上院でも多数派となった。だが強引な議会運営をすれば国内の亀裂は深まる。自制が求められる。

 バイデン政権が目指す国民融和には民主、共和両党の協力が欠かせない。その第一歩が就任式となる。

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