社説

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 吉川貴盛元農相が、鶏卵生産大手「アキタフーズ」(広島県福山市)グループの秋田善祺元代表から現金を受け取ったとされる事件で、東京地検特捜部などは収賄罪で吉川元農相を、贈賄罪などで秋田元代表をいずれも在宅起訴した。

 安倍政権時代から、「政治とカネ」に関する自民党内の疑惑が絶えない。カジノ誘致に絡む秋元司衆院議員の収賄事件、河井克行元法相夫妻の公選法違反事件があり、「桜を見る会」前夜祭の費用補填(ほてん)問題では、不起訴になったものの安倍晋三前首相が虚偽の国会答弁を認めた。

 「安倍1強」が招いた政治の劣化は目を覆うばかりだ。国民は不信を募らせている。公判で事実を徹底究明するとともに、菅政権は具体的な方策を講じなければならない。

 起訴状によると吉川元農相は、家畜を快適な環境で育てる国際基準への反対意見取りまとめなど、業界への便宜を図ってもらいたいとの趣旨を知りながら、在任中の2018年から翌年にかけて元代表から現金計500万円を受け取ったとされる。

 特捜部による任意の事情聴取で「大臣の就任祝いだと思った」と説明していたが、職務に関する賄賂と判断された。

 現金は大臣室でも受け取っていたという。信じがたい行為である。職務権限が伴わないとして立件が見送られた授受も計1300万円あったとされる。閣僚は業界の利益代表ではなく国民への奉仕者であるとの意識を欠いている。

 一方、秋田元代表は今回、吉川元農相や河井元法相の政治資金パーティー券の購入者を偽装したとして、政治資金規正法違反罪でも在宅起訴された。「政治とカネ」を巡る闇はどこまで広がっているのか、改めて驚き、怒りをおぼえる。

 看過できないのは、元農相が説明責任を全く果たしていない点だ。心臓病で入院し、体調不良を理由に昨年12月に衆院議員を辞職したが、事実上の引責とみられる。捜査などの追及や逮捕を逃れるための疑惑隠しとの批判もある。

 菅義偉首相も道義的責任は免れない。元農相の現金授受があった安倍政権時代に官房長官を務めていたからだ。自民党総裁選では菅陣営の選対幹部でもあった。首相として閣僚の綱紀粛正に努めるだけでなく、党総裁としてクリーンな政治のあり方を模索せねばならない。

 週明けには通常国会が始まる。野党は吉川元農相の国会招致を求めるとしている。元農相の健康状態を厳しく見極めた上で、与党は証人喚問の要求に応じるべきだ。国民の抱く疑惑を解明するのは国政調査権を持つ国会の責務である。

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