社説

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 新型コロナウイルスの感染拡大で緊急事態宣言が再発令される中、通常国会がきのう召集され、菅義偉首相が初の施政方針演説に臨んだ。

 首相は、国民に再び制約のある生活を求めることを「大変申し訳ない」と謝罪したものの、政府のコロナ対策への反省はなかった。

 「安心と希望に満ちた社会」の実現に向け、自らコロナ禍との「闘いの最前線に立つ」とも表明した。だが、感染拡大が勢いを増す現状では空虚に響くばかりだ。

 飲食店に的を絞った対策は適切か、医療体制の確保や困窮者への手当は十分か。政権の対応を厳しく検証し、誤りがあれば軌道修正を求める、国会の責任は重大である。

 焦点は、営業時間短縮の要請に従わない事業者や、入院を拒否した感染者に罰則を科す関連法の改正である。緊急事態とはいえ、私権制限につながる法改正を拙速な審議で決めることは許されない。

 現行法の見直しは全国知事会などが早くから指摘していた。だが政府、与党は野党の会期延長要求に応じず、臨時国会を早々に閉じた。国会が約1カ月半も休んでいる間に感染は拡大し、議論は進まなかった。

 事業者への補償や病床の確保が不十分なまま国や自治体の権限だけが強化されれば、国民の反発を招き感染者が潜在化するとの指摘もある。首相は国会軽視の姿勢を改め、丁寧な説明を尽くすべきだ。

 2020年度第3次補正予算案と過去最大となる21年度予算案の精査は欠かせない。停止された「GoToトラベル」の延長経費をそのまま計上したり、敵基地攻撃への転用が懸念されるミサイル開発で防衛予算が膨らんだりと問題が多い。コロナ禍に苦しむ国民への支援策との優先順位をどう考えるのかも論点だ。

 「桜を見る会」を巡って首相は、官房長官として安倍晋三前首相を擁護し事実と異なる答弁をした点は謝罪したが、政権内で相次ぐ「政治とカネ」の問題には触れなかった。「困難な課題にも答えを出す」と言うなら、前政権の「負の遺産」の清算にも取り組むべきだ。

 日本学術会議会員の任命拒否問題にも言及しなかった。任命拒否の理由という問題の核心は曖昧なまま、政権が人事に介入できるという既成事実だけが残る恐れがある。

 疑惑や批判に向き合わず、強権的にものごとを進める姿勢が、国民のさらなる不信を招いている。それが政府のコロナ対応にも影を落としていると首相は自戒すべきだ。

 内閣支持率の下落は政治不信の深刻さを示している。国民の不安や懸案への「答え」を迫る真剣勝負の論戦を、与野党に期待したい。

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