社説

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 バイデン米政権が発足した。

 過去最高齢となる78歳の新大統領を待ち受けるのは、かつてない試練の数々である。

 米国内はもとより、国際社会において、持ち前の「再生する力」をどこまで発揮できるのか。世界が注視している。

 新型コロナウイルスによる米国の死者は40万人を超え、世界最悪だ。社会の亀裂は深い。4年間のトランプ流が行き着いた先は、民主主義そのものへの攻撃だった。

 バイデン氏は選挙戦で「ビルド・バック・ベター(より良い再建を)」と訴えてきた。その旗印の下、分断の政治と決別し、融和と希望へ向け着実に進むことを強く望む。

    ◇

 厳戒態勢の下で行われた大統領就任式は異例ずくめだった。

 連邦議会議事堂は、2週間前に起きたトランプ支持者らによる襲撃事件の爪痕がまだ生々しい。本来なら一般市民で埋まる議事堂前の国立公園には、コロナ対策もあって多くの星条旗が立てられた。

 何より、退任する大統領が欠席した。152年ぶりの事態という。

 「今は歴史的な危機と挑戦の時だ。そして団結こそが前進の道だ」。バイデン大統領は就任演説で繰り返し国民の結束を訴えた。

 「政争を脇に置こう」とも語った。コロナの感染拡大を収束させるのが、目下の最優先課題である。国民に理解を求め、党派を超えて対策に当たるには、真の意味で「全国民の大統領」にならねばならない。

 社会に残る「火種」

 副大統領経験があるバイデン氏は、その難しさと必要性を身をもって感じているはずだ。強力なリーダーシップを期待したい。

 米国世論の深刻な対立は、南北戦争以来といわれる。新大統領も認めている通り、融和への道のりは険しく、予断を許さない。

 白人至上主義や排外主義を勢いづかせた「トランプ的なもの」は存在感を失っていない。むしろ社会に根を下ろした感さえある。混乱の火種となりかねず、難しいかじ取りを迫られる。

 ここで忘れてはならないのは、経済格差の拡大に苦しむ人々への目配りである。

 トランプ政権の前から、中間層がやせ細っていく状況に政治は有効な手を打てていなかった。現状への不満や将来への不安が社会の分断を招いた側面は大きい。

 バイデン氏は中間層の再建を掲げる。経済のグローバル化が進む中、先進国に共通した課題でもある。取り組みに注目したい。

 多様性を認め合う

 新政権の最大の特徴は多様性だ。女性初の副大統領となったハリス氏は黒人、アジア系である。閣僚ポストに就く女性は過去最多を見込み、非白人も積極的に登用している。

 米国のパワーの源でもある多様性に希望を託そう、とのメッセージと読み取れる。

 違いを尊重し、異なる意見にも耳を傾ける。傷ついた民主主義を力強く復元させるための第一歩として高く評価したい。

 「同盟関係を修復し、再び世界と関わり合う」

 新大統領は就任式で国際社会への復帰を高らかに宣言した。加えて、前政権が脱退した地球温暖化対策の枠組み「パリ協定」への復帰手続きに直ちに着手し、世界保健機関(WHO)からの脱退も撤回した。

 米国第一主義から国際協調路線への転換に、日本をはじめ安堵(あんど)した国は多いだろう。望ましい方向だ。

 気候変動や感染症といった地球規模の危機に対応するには、これまで以上に多国間連携が鍵になる。

 超大国としての威信に陰りが見えるとはいえ、米国は依然として圧倒的な軍事力と経済力を持っている。中国が台頭し、世界が多極化しつつある中、米国が国際社会での指導力を取り戻す必要性は増している。

 民主主義国の一員として、日本が世界で果たす役割もバイデン時代に鋭く問われるに違いない。

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