社説

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 新型コロナウイルスの感染拡大で1年延期された東京五輪・パラリンピックが、開幕まで半年を切った。

 しかし、国内では11都府県に再発令された緊急事態宣言の延長が検討され、世界の感染者は1億人を超えた。収束の気配が見えない中、国内外に見直し論が広がっている。

 菅義偉首相は「五輪を人類がウイルスに打ち勝った証しに」と述べ、開催への強い意欲を示す。東京開催を追求するなら、政府と大会組織委員会は現実を直視し、新たな五輪のかたちを見いださねばならない。

 政府が期待を寄せるのが、日本でも4月以降に高齢者から接種開始が見込まれるワクチンだ。ただ、供給量の確保や効果には不確定要素が少なくない。「集団免疫」が獲得されるまでには時間がかかるとの指摘もあり、ワクチン頼みの計画はリスクが高いと言わざるを得ない。

 政府、与党や国際オリンピック委員会(IOC)の内部からも開催を危ぶむ声が表立って出始めた。感染拡大は選手の代表選考や強化計画にも影響している。各国の競技団体や選手からの慎重論も予想される。

 国内世論はさらに厳しさを増している。1月、共同通信社が実施した全国電話世論調査では、「中止するべき」との回答が35%、「再延期するべき」は45%だった。国民の多くが何らかの見直しを求めていることは間違いない。

 当初は2年延期して2022年開催案もあった。だが組織委の森喜朗会長は再延期は「絶対不可能」と述べ、その理由を東京都や関係省庁などから組織委への出向期間延長が難しいためとする。その説明で国民が納得できるだろうか。

 IOCも再延期には否定的だ。今後の開催都市との調整や施設の確保などでハードルは極めて高いが、政府と組織委はIOCと議論を深め、あらゆる可能性を探る必要がある。

 もう一つの焦点は観客動員の判断だ。政府は観客の規模、海外からの受け入れ可否について3月ごろに判断するという。

 だが、現状は水際対策の強化でスポーツ関連の入国特例も一時停止されている。国民の安全と安心を優先するなら、少なくとも観客を国内に限る判断はやむを得ないのではないか。同時に、無観客での開催についても早急に検討するべきだ。

 医療体制がさらに逼迫(ひっぱく)するとの懸念もある。選手らの感染症対応に1万人が必要とされる医療スタッフを集められるのか、それによって地域医療に支障が生じないか。

 どんな状況になれば安全な大会運営が可能か。選択肢を示し、国民に開かれた議論を進めなければ、五輪を受け入れる世論は生まれない。

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