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 欧州連合(EU)を正式離脱した英国が、環太平洋連携協定(TPP)への参加を正式に申し入れた。発足時のメンバーである11カ国以外では初の申請で、共通のルールにより自由貿易のメリットを享受する経済圏は太平洋を超えて広がる。

 もともとTPPには、日米を中心に太平洋を囲む自由貿易圏を設定し、中国への対抗軸とする狙いがあった。ところが米国は「自国優先」を掲げたトランプ政権の誕生に伴い、4年前にTPPを脱退した。対して中国が昨年になってTPP参加の意向を示し、当初の思惑と大きく異なる状況になっている。

 英国の加入や米バイデン政権発足など、TPPを取り巻く環境は変わりつつある。貿易問題を端緒に軋轢(あつれき)を深める米中を、この機をとらえて共通のテーブルにつかせることはできないか。議長国の日本は、外交手腕を最大限に発揮すべき局面だ。

 すでに英国は、日本との経済連携協定(EPA)を発効させている。EUとも自由貿易協定の締結で合意した。ジョンソン政権としては、EU離脱で通商政策のフリーハンドを握ったことを国内外にアピールする狙いもあるのだろう。

 TPP参加国の国内総生産(GDP)が世界全体に占めるシェアは、英国の加入により約13%から約16%に上昇する。批准に必要な国内手続きを終えていない参加国の背中を押す効果も期待できそうだ。

 一方で慎重な判断が求められるのは、中国のTPP参加である。

 昨年、日中韓など15カ国が署名した包括的連携協定(RCEP)に比べ、TPPが求める経済開放のハードルは高い。国有企業が幅を利かせ、企業活動に政府の意向が色濃く反映される中国が、TPPの輪に加われるとは考えにくい。

 懸念するのは中国の巨大市場と有利に取引するため、参加国がさまざまな例外を設けて加入を認める展開だ。TPPの存在感が低下するだけでなく、国際社会が中国の現状や対外姿勢を追認したとの誤ったメッセージになりかねない。

 同盟国である米国にTPP復帰を働きかけ、加入の意向を示す中国には内政の転換を促す。国際社会に貢献するために、日本は困難な役回りを果たす必要がある。

 TPPは発効から2年を過ぎた。輸入農産物の台頭で国内農業が深刻な影響を受けるとの指摘に対し、政府は「国益を守る」と繰り返すばかりだった。

 参加国拡大に奔走するだけでなく、国益を増やし、輸入品に対抗できるだけの強い農業を築き上げる方策とこれまでの成果についても、政府は客観的に検証するべきだ。

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