社説

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 潜水艦は極めて頑丈な合金の塊だ。まともにぶつかれば並の船はひとたまりもない。船体が破損すれば沈没する恐れがある。

 高知県沖で起きた海上自衛隊の潜水艦と民間商船の衝突事故は、あわや大惨事の危うい事態だった。

 一般の船が海中の潜水艦に気付くのは難しい。海自の場合は安全保障上の理由で姿を隠し行動することがままある。衝突回避の注意義務は潜水艦の側に強く求められる。

 水中音波探知機(ソナー)や潜望鏡で安全を確認するのは「基本中の基本」と、海自OBも指摘する。

 なのになぜ、あってはならない衝突事故は起きたのか。原因を徹底的に解明する必要がある。

 事故の発生は8日朝である。高知県沖の太平洋上で、潜水艦「そうりゅう」が香港船籍の貨物船の底にぶつかった。潜水艦はアンテナなどを損傷して一時、司令部との通信ができなくなった。貨物船も船体にへこみなどができた。

 潜水艦の乗組員3人が軽傷を負ったが、約20人の貨物船乗組員にけがはなかった。大事に至らなかったのは不幸中の幸いというしかない。

 潜水艦は定期点検後の訓練中で、当時は浮上行動に移っていた。通常は周囲に船がいないか、安全確認の手順に間違いがないかを複数でチェックするという。

 しかし今回、報告や指示が不適切だったとの見方が浮上している。

 第5管区海上保安本部(神戸)は業務上過失往来危険などの疑いで捜査すると表明した。運輸安全委員会も船舶事故調査官を派遣した。

 海自も事故調査委員会を設置したが、まずは海保の捜査などに全面協力しなければならない。

 20年前の2月10日、ハワイ沖で米海軍の原子力潜水艦に衝突された愛媛県の水産高校の実習船「えひめ丸」が沈没し、高校生ら9人が亡くなった。追悼式の2日前に今回の事故が起き、新たな衝撃を広げた。

 1988年には潜水艦「なだしお」が東京湾で釣り船と衝突し、釣り船の乗客ら30人が死亡する事故も起きている。「えひめ丸」は浮上する潜水艦とぶつかったが、釣り船は海上航行中の潜水艦と衝突した。

 どんな形であれ、潜水艦との衝突事故が船舶の側に甚大な被害をもたらす危険性を示している。

 「なだしお」の事故では潜水艦側の見張りの不適切さや艦内の連携不足が主な原因とされた。同じような問題が繰り返されたのなら、教訓は生かされなかったことになる。

 民間船舶との衝突事故は潜水艦以外の自衛艦でも起きている。海自は全ての艦船を対象に、安全対策に抜かりはないか、総点検すべきだ。

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