社説

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 神戸市は総額1兆8531億円の2021年度当初予算案を発表した。新型コロナウイルスとの闘いを最優先しつつ、三宮再整備などの大型プロジェクトを加速させる。厳しい財政状況の中で、積極的な投資にかじを切った印象だ。

 久元喜造市長は「海と山が育むグローバル貢献都市」を掲げた。人と産業が集積する大都市のメリットが、コロナ禍ではリスクに転じる。自然にも恵まれた神戸の特性を生かして新たな生活スタイルや働き方を発信し、コロナ後の持続可能な都市を実現する。その方向性はおおむね理解を得られるだろう。

 一般会計は8704億円で前年度比3・8%増となる。コロナ対策以外では、三宮をはじめとする駅周辺のリノベーションや道路整備などで、補助事業を含む投資的経費の伸びが7・3%増と際立っている。

 都心・三宮では、新中央区総合庁舎、市役所2号館、東遊園地の整備なども本格化し、新たな「神戸の顔」が見えてくる。主な新規・拡充施策には、子どもや子育て世帯、若者に目配りした施策が並ぶ。

 ハード面で都市の魅力をアピールし、ソフト施策で若い世代を呼び込む姿勢を鮮明にしたと言える。

 一方で、高齢者向け施策への言及は少ない。その中でも、情報通信技術(ICT)や介護ロボットの導入を促し、介護施設で働きやすい職場づくりを進める。介護人材を確保する取り組みとして欠かせない。

 ただ、ケアされる側はデジタル対応に慣れていない世代でもある。「人にやさしい、温かみのある社会」を目指すなら、誰も置き去りにしないというメッセージが伝わるような工夫がいるのではないか。

 阪神・淡路大震災で危機的状況に陥った市財政は、厳しい行財政改革を経てようやく回復しつつある。

 だが、コロナ禍の影響で市税収入は大きく落ち込む。予算編成では国の交付税などで穴を埋めたものの、次年度以降の動きは見通せない。財政調整基金の目減りも懸念材料だ。

 これに対し久元市長は、デジタル化の推進で業務を見直し、職員減と組織のスリム化をさらに進める決意を強調した。市政改革が市民サービスへの影響や職員の士気低下を招かないよう、庁内で目的を共有し、徹底的に議論しなければならない。

 コロナ禍で生活不安や孤独感を深めていても、行政の目が届かない人もいる。地域課題を掘り起こし、一人一人に寄り添う活動ができるNPOなどとの協働が今こそ重要だ。

 震災の経験が育んだ「市民の力」を引き出す市民参画の仕組みを十分に機能させ、新たな神戸の姿をともに描いてもらいたい。

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