社説

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 東日本大震災による東京電力福島第1原発事故後、福島県から千葉県に避難した住民らが損害賠償を求めた集団訴訟の控訴審判決で、東京高裁が国と東電に計約2億7800万円の賠償を命じた。

 一審の千葉地裁は国の責任を認めていなかったが、東京高裁は、国が東電に津波対策を命じなかったことを「違法」と断じた。

 控訴審で国の責任が認定されたのは2件目だ。住民の逆転勝訴の意味を国は重く受け止めねばならない。

 原発事故で避難せざるを得なくなった住民が国や東電に損害賠償を求めた集団訴訟は、神戸地裁に提訴された兵庫訴訟など全国で約30件に上り、原告は1万人を超える。

 国が被告となった訴訟で、国の責任を認めた地裁判決は、14件中7件と判断が割れている。高裁段階では今年1月の東京高裁は認めなかったが、昨年9月の仙台高裁と今回の東京高裁で国の責任を認定した。最高裁が統一判断を示す見通しだ。

 一連の訴訟では、津波の到来を予測し、その対策をしていれば事故を回避することができたかどうかが争われている。今回の高裁判決は、2002年に政府の地震調査研究推進本部(地震本部)が出した「長期評価」に科学的信頼性があったとし、「国は津波の危険があると認識できた」と判示した。

 長期評価について、国は「精度・確度に問題があり、直ちに原子力防災に取り入れるような知見ではなかった」と主張していた。

 しかし地震本部は阪神・淡路大震災を機に、地震研究などを一元的に進めるために発足した政府の特別機関である。気象庁や国土地理院が関係し、大学の研究者などの専門家で構成されている。

 国はその評価をないがしろにし、防災対策に生かそうとしなかった。原発事故は起こらないという安全神話のとりことなって、思考停止に陥っていたとの批判は免れない。

 判決は避難生活の苦痛に対する慰謝料に加え、長期避難で生活環境の基盤が失われた精神的損害についても賠償すべきだと述べた。「(原告は)慣れ親しんだ生活環境を享受することができなくなり、精神的損害を被った」とも指摘した。

 裁判長らは被災地を視察し、帰還困難区域にある民家などにも足を運んだ。原告側の弁護士は「視察が判決の基礎となった」と述べている。

 11年の原発事故から間もなく10年を迎える。その間、古里を失った苦痛の中にいる被災者の心情に寄り添った司法判断と言える。

 国や東電は被災地の現状にあらためて目を向け、最高裁の判断を待たずに早期救済を図るべきだ。

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