社説

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 中国の習近平政権は、民主的な政治活動を香港から一掃するつもりのようだ。活動家らの大量逮捕に続き、自由選挙を事実上不可能にする制度の見直しに踏み切った。

 香港は24年前に英国から返還されたが、中国本土と異なり、高度な自治を認める「一国二制度」が維持されていた。そのため世界第5位の国際金融センターとして繁栄し、経済的な窓口となってきた。

 しかし、先月の全国人民代表大会(全人代)で、国家機関が立候補者の資格審査に関与するなどの制度が導入された。香港市民の政治的な自由を許さない、中国共産党の姿勢がむき出しになったと言える。

 「愛国者による統治」を確実にするとの理由だが、内実は多様な言論を封殺する強権支配というしかない。「一国二制度」を返還から50年保障するとした国際公約にも反しており、容認できない事態だ。

 中国の国会に当たる全人代は先月、総会と常務委員会を開催し、香港の選挙制度について重要な見直しを続けざまに決定した。中央主導による頭越しの対応である。

 新たに導入された選挙制度は、民主派の政治参加を二重三重の関門で排除する形になっている。

 行政長官と立法会(議会)の選挙では、候補者は事前に選挙委員会の推薦を得る必要がある。さらに資格審査委員会の審査を受けるが、そこでは国家安全維持委員会が警察の調査による意見書を提出し、「中国香港への忠誠」がチェックされる。

 選挙委員会の構成も親中派に有利な枠が拡大され、逆に有権者が直接代表を選ぶ立法会の選挙枠は、全議席の約2割に減らされた。これでは民意はほとんど反映されない。

 民主化を求める市民からは「選挙は無意味になる」「勝者は中央政府だけだ」と、政府の統制強化を恐れる声が高まっている。身の危険を感じて亡命した活動家もいる。

 当然だろう。犯罪容疑者の中国本土引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案に反対する大規模デモが始まって以降、この2年足らずで1万人以上の市民が逮捕された。

 反体制的な言動を取り締まる香港国家安全維持法が昨年施行され、民主派の女性リーダー周庭(しゅうてい)氏らに実刑判決が出されている。力による弾圧以外の何物でもない。

 米国などが「深い懸念」を表明し、国際社会では中国に対する非難が強まっている。茂木敏充外相も中国の王毅国務委員兼外相に同様の懸念を伝えたが、香港の自治を尊重するよう、繰り返し促すべきである。

 市民の自由を押しつぶせば、香港の輝きまで失う。そのことを中国指導部は深く考えねばならない。

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