社説

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 生活協同組合コープこうべは創立から100年の節目を迎えた。

 源流は、社会運動家の賀川豊彦が設立にかかわった購買組合である。当時、第1次世界大戦後の不況で社会が混乱していた。

 現在は兵庫県を中心に大阪府北部にも店舗網と宅配網を広げ、生協では国内3位の規模を誇る。子育てや介護、文化などの幅広い事業は地域に根づいている。食の「安心・安全」にいち早く取り組み、消費者運動をけん引してきた。

 そうした足跡から、信頼と親しみを込めて「コープさん」と呼ぶ組合員や地域住民は少なくない。

 しかし、近年は存在感が薄れてきたとの指摘が組合員から上がっている。時代の変化に対応しきれていないとの厳しい声も聞く。

 ネット宅配が普及し、スーパーや量販店などとの競争はさらに激しくなる。商品の安心・安全は他社でも当たり前になった。組合員の要望を取り入れながら、品ぞろえや価格で競争力を高めることが不可欠だ。

 生協はその原点が示す通り、相互扶助の精神で組合員の暮らしを守るのが使命である。

 コロナ禍は、弱い立場の人を一層つらい状況に追いやっている。格差はさらに広がり、高齢者や子育て世帯の孤立化は深刻だ。

 これまで以上に生協の存在意義が問われている。組合員の困りごとや地域課題を丁寧にすくい上げ、解決へ向け真価を発揮してほしい。

 そんな中、コープこうべは今、「おわび行脚」の真っ最中である。

 経営幹部が内規に違反して取引先からゴルフの接待を受けていた問題が内部通報で発覚し、先ごろ、組合長を含む2人を解職した。組合員への説明会では、ガバナンスの不備を指摘する声が相次いでいる。

 生協には高い倫理性が求められていることを改めて胸に刻む必要がある。原点に立ち返り、組織におごりや慢心がなかったかを点検し、信頼回復に全力を挙げねばならない。

 100年前、職員が組合員の家を訪ねる「ご用聞き」からコープこうべの歴史は始まった。2000年代に入って個人宅配の利用が増え、店舗と宅配の供給高(売上高)は拮抗(きっこう)するようになった。

 組合員が求めるものは多様化している。現代版のご用聞きとして、掘り起こしに努めてもらいたい。

 賀川豊彦が説いた「協同組合の中心思想」の一つに「人格経済」という言葉がある。人間を尊重した経済社会を目指すとの意味だという。

 市民が助け合うために自主的につながる生協の重要性は変わらない。先駆者であるコープこうべは理念の実現に向け役割を果たすべきだ。

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