社説

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 震度7の激しい揺れが2度も襲った熊本地震は、きょうで「本震」の発生から5年となる。

 関連死を含め276人が命を落とし、約20万棟の家屋が被災した。道路や鉄道も大きな被害を受けたが、JR豊肥線や阿蘇大橋は復旧した。しかし社会基盤は完全には戻らず、コロナ禍もあって観光をはじめとする地域経済の復興も道半ばだ。

 地震による避難者は最大で18万人を超え、今年3月末時点でなお418人が仮住まいを続けている。

 熊本県が計画した1715戸の災害公営住宅は全て完成したが、入居者の半数以上が高齢者世帯だ。仮住まいを終えても生活再建が難しい人は少なくない。被災者を息長く見守る取り組みが必要である。

 阪神・淡路大震災の仮設住宅は、空き地に建設するプレハブが大半だった。熊本の場合、自治体が民間から賃貸住宅を借り上げる「みなし仮設住宅」が約8割を占めた。みなし仮設は早く入居でき、落ち着いた暮らしを取り戻しやすい。

 一方で、住み慣れた町を離れ、自治体の支援情報が避難先に届かずに生活再建の時機を逸したり、孤立感を深めて心身に不調を来したりするという問題がある。

 益城町(ましきまち)で被災し、みなし仮設に入居した人や退去世帯への見守り活動を続ける民間団体「minori(みのり)」の高木聡史代表理事(53)は「外からは見えにくい課題を抱える被災者は多い」と指摘する。

 高木さんらが約1600世帯に聞き取ったところ、486人が「退去後も生活面や健康面で支援が必要」と答えた。その中には、心的外傷後ストレス障害(PTSD)やうつ病の兆候が見られる人がいる。朝からアルコールを飲む人や自宅に引きこもる人が多いのも気がかりだ。

 コロナ禍の影響も懸念される。交流の機会や見守り活動に制限がかかり、コミュニティー再構築の支障になっている。高木さんらが手掛けてきた定期的な訪問など、「仮設後」も見据えたつながりの支援を継続しなければならない。

 熊本では仮設・復興住宅での孤独死は5年間で35人に上る。今後、孤立や孤独死を防ぐための手だてが一層必要となってくるだろう。

 想定される南海トラフ巨大地震では、国は約120万戸のみなし仮設の利用を見込む。一人も取り残さないために、避難者の情報を共有する方法など、自治体間や民間団体との連携を事前に検討すべきである。

 熊本地震の教訓の一つは、仮設後の生活再建も見通した個別支援の安全網が地域に不可欠ということだ。困窮や孤立、孤独を防ぎ、命を守るための備えに万全を期したい。

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